QUARTET★NIGHT



「麗奈、来ていたんですか」
「トキヤ」

「後ほど、貴女の部屋に伺うつもりでした」


タオルで頭を拭いているトキヤは頬が上気していた。お風呂上がりだから当たり前なんだけど、


「明日、仕事が入りました」
「あ、そうなの?実は私も午前中仕事になっちゃったの」


それならまた次回、と話しは終わって私は部屋を後にした。が、嶺二が部屋まで送ると言ってくれたので、甘えることにした。


「ランランと、話したい?」
「怖いけど、話したいよ
だって、大事な後輩だもん」

「…麗奈ちゃんにとって、僕達は後輩?」
「そうだよ、大事な、大事な後輩」

「僕達は、違うんだけどな」


嶺二は悲しそうに笑う。後輩は後輩だ。ほかの後輩よりも、近くて、大事な、後輩。


「僕らは、麗奈ちゃんを先輩だけど仲間だと思ってるんだけどな」
「え…」

「QUARTET★NIGHTはたまにしかやらないけど、4人のとき麗奈ちゃんが曲を書いてくれるでしょ?
QUARTET★NIGHTは4人だけど、僕らは5人だって思ってるよ」


麗奈も、僕達QUARTET★NIGHTの大事なメンバーだ、と言ってくれた。滅多に活動しないけど、今はマスターコースで一緒にいることが多いから、シャイニーの命令でQUARTET★NIGHTの活動をしているけれど。


「…なかま」
「そう、僕らは仲間。違う?」

「違わ、ない」


仲間には、なんでも話してよ。先輩のプライドあるかもしんないけどね?と嶺二はいつものように楽しそうに笑った。お見通しなんだね、やっぱり。


「…嶺二」
「んー?」

「蘭丸、部屋にいるかな」
「うーん、いるんじゃない?」


藍とカミュは?と聞くと、多分いるよと嶺二は言う。きっと、私の行動はお見通し。


「嶺二、3人を私の部屋に連れてきてほしいの」
「いいけど、後輩ちゃんがいたら話せないんじゃない?」

「春歌、今日はピアノずっと弾いてたいって言ってたから、練習室に篭りっぱなしなの」


だからお願い、と言うと嶺二は任せて、と私の頭をぽんと叩いた。











こんこん


「はい」

「きたよ」


扉を開ければ、嫌そうな蘭丸が一番後ろにいた。よかった、来てくれたんだ。


「…急に呼び出してごめんね」

「別にいいけど、話ってなに?」
「まぁとりあえず、麗奈ちゃん入っていーい?」


どうぞ、と部屋に通す。四人掛けのテーブルに座ってもらって、私は用意していた紅茶をだす。彼の好みは、わかっているから聞くなんてことはしない。
嶺二は、少し甘めのミルク入り。蘭丸はレモンを搾ってそのまま。藍は砂糖もミルクもレモンも入れないストレート。カミュは、ミルクを入れて、気持ち悪くなるくらいの砂糖。分量がわからないけど、いつも五杯くらい入れてたから、それに合わせてる。


ふぅ、と一息ついた彼ら。私は立ったまま、心臓が痛いけど、一つの決心をした。


「…こんな遅くに呼び出すくれぇだ、重要な用事なんだろうな?」


ピリピリとしたままの蘭丸に、ぴくりと肩が揺れる。怖いわけじゃ、ないのに。


「私、頑張るから

この間はごめんね。仕事に私情を挟むの、プロ失格なんだけど、告白されて、悩んでたの。

でも、大丈夫。私は、大丈夫だから

…皆と、普通に話したいの」


蘭丸は、誰に言われたと睨みつけてきた。藍も、誰?と問う。カミュには以前教えたからか、聞いてはこない。


「…ST★RISHと、龍也に林檎

モテ期、到来しちゃったみたい」


蘭丸は眉を寄せる。アイツらもかよ、と小さく吐き捨てるように言ったが、その声は麗奈には聞こえなかった。


「4人に、お願いがあるの」
「なに?」
「聞くくらいはタダだ。聞いてやる」

「今度、シャイニング事務所の創立記念と学園の創立記念行事で、私と一緒に歌ってほしいの」


QUARTET★NIGHTとして、と言えば、蘭丸は驚いた顔をすぐにいつもの顔に戻す。なんで俺が。QUARTETは今だけだろ、と嫌なようだ。


「ボクは、麗奈がしたいなら、いいよ」
「…条件付きでいいなら、考えてやる」

「僕ちんは、言うまでもなくオッケーだよん!」

「おいお前ら…!」

「ランランが嫌なら、僕ら3人と麗奈でやろうよ、アイアイにミューちゃん、それでいい?」

「うん」
「構わん」


二人の様子に、蘭丸は舌打ちをし、ガタンと音をたてて椅子から立ち上がり部屋の入口に向かう。


「らん、」
「2曲だ」

「…え、」

「てめぇの曲、2曲で手を打ってやる」


小さな声で言っていたけれど、静かなこの部屋には響いた。


「わ、わかった!
できたら持ってくから!」


蘭丸は返事をせずに部屋から出ていったが、嶺二はくすりと笑った。


「ほーんと素直じゃないんだから」
「曲はどうするの?」

「作るよ。っていうか、まずはシャイニーに許可とらないと」


電話で聞いてみればシャイニーはモチローンオーケーでーす!ミス一条、これからもいい曲ジャンジャンバリバリ書いて歌ってちょーだい!とテンションが高めだった。


「このまま5人でCDをリリースしまショウカー?」
「…うーん、お客の反応次第かな」


QUARTET★NIGHT



(仲直り、まではいかないけど)
(よかった…)



20130623

ちょっと長め。
そしてランラン迷子(←)
次回はランランのターンかレンのターンか…。