ソファに向かい合って座っている。カップをテーブルに置くと、嶺二は私を見ていたようで味は大丈夫だった?と問われる。私の、好きな味を覚えていてくれたことが、嬉しいと思った。
「私の好きな味。ありがと嶺二」
どういたしまして、と嶺二は笑ったが、すぐに真面目な顔つきになり、それでね、と口を開いた。
「この間、なんで泣いてたの」
「……色々、あって」
「その色々は、僕には言えないこと?」
そういうわけじゃない。けれど、嶺二が関係していて、カミュの前で泣いたのは嶺二とのキスを見られていたからだ。本人に、言いたくなかった。傷つけて、しまいそうだから。
「麗奈」
「…言えないや」
「ミューちゃんには言えるのに?」
嶺二の言葉が刺さる。カミュに言ったのは見られていたからだ。あれから私はカミュに頼りすぎてしまっている。
今までは嶺二や蘭丸と話すことが多かったから、彼らに比べれば会話は少なかったけど、あのことがあってからは、カミュと話すことが多くなっていたから。
「嶺二には、言えない」
「僕が関係してるんだ…あ、もしかしてあの時の見られてたり?」
「!」
なんで嶺二はこうも鋭いのかなぁ…。やっぱり、と嶺二は困ったように笑った。
「ごめんね、まさか見られてたとは思わなかった」
「い、いいの…泣いたのは、それだけが原因じゃない、から」
「ほかの理由は?」
す、と目を細めながら言う嶺二にごくりと唾を飲み込んだ。あぁ、言わないといけない。嶺二は、逃がしてくれないんだ。
「…みんな、私を好きになるから」
「へ?」
「嶺二達も、林檎も龍也も、トキヤ、音也、翔に那月、真斗くんも…みんな」
「え、そんなにいたの?!」
目を見開いた嶺二にこくりと頷くと、嶺二は徐に立ち上がると私の隣に座り、頭を撫でた。ゆっくりと、優しく。
「そっか…パンクしちゃったんだね」
「私、自分に自信なんてないのに、どこがいいのか、わかんなくて。媚び、売ってるって思われてるのかな、って」
「うーん…麗奈は誰にでも優しいし、ちゃんと人を見てる
それに、笑った顔は誰よりも可愛い」
媚び売られてると思ったら好きになんてならないよ。前にカミュに言われた言葉と同じような言葉をくれて、ぽんぽんと頭を撫でられて、次第に視界が歪む。私、こんなに涙腺緩かったっけ。
「悩ませてごめん、ごめんね」
「っ、ちが…みんなは、嶺二は悪くないの…っ」
「僕はね、」
気付けば嶺二の腕の中。背中に嶺二の手があってぽん、ぽん、と優しく、宥めるように叩かれる。落ち着く、安心する。
「麗奈の笑った顔も好きだけど、怒った顔も困った顔も、仕事してるときの麗奈も、声も全部好きなんだよ」
「れい、じ」
「一番は笑顔だけどっ」
ぎゅう、ときつく抱きしめられる。優しいね、嶺二は優しい。ごめんねは私のほうなのに、
「ランランも、心配してるよ」
「…うそ」
「嘘じゃないよ、この間、一番心配してたのはランランなんだから。
なんで話さないんだって、ランランは怒ってるんだよ。近い場所にいるのに、麗奈はいつだって抱え込むから」
ただランランは口が悪いし思ってること素直に口にできないんだけどね、と嶺二は言う。
あんなに怒っていて、呆れられたのに、蘭丸は私を心配してくれてたんだ。
「ありがと、嶺二」
「あ、でも僕ちんもすごーく心配してたんだよ?」
「うん、わかってるよ」
「あまり悩まないで、ありのままの麗奈が一番だよ?」
身体を離して、にっこり笑った嶺二に釣られて、私も一緒に笑った。
ありがと、嶺二。
優しさに甘える
20130622
れいちゃんのターンでした!
本当はれいちゃんヤンデレ可の予定だったのですが、そうすると先がおかしくなるので大人のお兄さんに変更です(笑)