林檎と龍也に連れられて、私は寮を歩いていた。
ていうかいつも思うんだけど、何この広さ。どんだけの人数が住んでるわけ?…お金の無駄遣いだよシャイニー。私が使わせてもらってるマンションもバカみたいに広いし、林檎のところも龍也のところも広い。お金持ちだからっていうのはわかるんだけど…使うところが違う気がする。
「ねぇねぇ、あの3人にも内緒なの?」
「もちろんよ、だってバラしたら面白くないじゃない?」
「お前も一緒に出てきたらアイツらも緊張するだろ」
二人の意見は最も…ていうか林檎のはなんか違うけど。どっちにしても緊張はするでしょう。だって私学園の一期生だし、担任だった林檎達の同期だし。
「まぁ、いっか」
考えるのも疲れてきたから、とりあえずは練習室に向かって私も足を進めた。
…ていうか、林檎が普段通りすぎる。なんかもっとこう、緊張っていうか…私が変に意識してるのが悪いんだろうけど、けど…!やっぱり、からかわれてたんだ!
「麗奈」
「ひゃ、あ…なに、林檎」
「あんまり意識されちゃうと、困るんだけど?」
「、ちが、してないし!」
「ふふ、かーわいっ」
ぎゅう、と林檎が抱き着いてきて私は顔が熱くなる。いつものことなのに昨晩の林檎の男の部分を見てしまっては、意識してしまうのも無理ないと思う。…あざとい。
「さ、てと。ここでちょっと待機ね」
「はーい。…あ、始まった」
聞き慣れた曲は、先日私が作曲した彼ら3人と伯爵様の曲だ。うん、彼らの声が綺麗に合わさって耳に留まりやすい。歌詞はだいたいこんな感じでってお願いした通りの内容になったし、やはり彼らもアイドル。人を魅せるのがうまい、私も頑張らなきゃ。
下を覗いてみればST☆RISHの子達が感嘆を息を漏らしていた。当たり前だ、まだ駆け出しの君達とは違う。厳しい芸能界を生き抜いている先輩である。歌も、ダンスも、曲も…君達ではまだまだ追い付くことはできないだろう(曲に関しては、一曲一曲自信持っていないと作曲家なんてやってられない)。
「さ、行くわよ麗奈」
「しっかり捕まってろよ」
「はいはい
あ、キャラ作りもしなきゃ駄目?」
「最初だからな、テレビと同じでいけ」
「…疲れるんだよなぁ」
でもまぁ仕方ないか。
ガタン、とクレーンが動き出して林檎がみんなお待たせーっ、と声をかける。。「おはやっぷーっ」と彼の声が響いて下に下りていくと、二人の真ん中にいる私は必然的に注目を浴びるわけで。
「りんちゃん!…衣装がキラキラ…」
「日向先生までキラッキラ…」
「も、もしかして一条麗奈!?」
「なんでここに?!」
投げキッスをかます林檎の隣にいる私を見てST☆RISHは口々に私をみて驚きの声をあげる。いや、ST☆RISHだけじゃなく嶺二達もである。ぽかん、と口を開けている様はなんだか面白い。
「お前らはもう生徒じゃなく芸能界を生き抜いていくプロだ」
「これからは自ら学び、自分を磨いてねん」
「しかし、わからないことや不安も多いだろう」
「そこで、あなた達を手助けするために、この子達が担当につくの」
私たちのところまで歩いてきた嶺二達に、私はいまだ驚きを隠せていない3人ににこりと笑ってみせた。
「おい、なんでお前がいるんだよ」
「僕ちんビックリしちゃった」
「…ふふ、後でお話があるから待っててね」
昨日から…というかいつもいつも敬語を使ってこない。これからマスターコースでもこうだと、下に示しがつかないわけで。ST☆RISHを怖がらせないようにこりと笑うと、蘭丸達の口許が引き攣った。
「音やんとトキヤちゃんには寿嶺二くんね」
「よろしくまっちょっちょ」
片手をあげて人当たりよさそうな笑みを向ける嶺二。
「神宮寺と聖川には、黒崎蘭丸」
目線は向けるものの、何も言わずに彼らを睨みつける蘭丸。
「翔ちゃんとなっちゃんには、美風藍ちゃん」
あまり興味なさそうに、二人に体を向ける藍。
「そして春ちゃんには、一条麗奈がつくから」
「え、」
「「「「ええええええ!?」」」」
はじめまして。
(嶺二達まで驚くなんて)
(ちょっとひどくない?)
20130417
ながい…。