会場までの車で




歌番組の収録から一週間、今日は真斗くんのオーディションの日だ。


「さてと、私は先に行かなきゃいけないからいくね?」
「はい、最後まで指導ありがとうございました」

「いいのいいの、期待してるね」


手を振って真斗くんと別れる。真斗くんに頼まれて早朝から最終チェック、というか稽古をつけていた。出演が決まっておりオーディション参加者の相手役も勤める私は、オーディションの参加者よりも先に会場に着かなきゃならなくて、龍也が車を出してくれるらしいのでそれに乗り込み、会場に向かった。


「…この間の収録、散々だったらしいな」
「あ、聞いたんだ。嶺二?」
「あぁ。
で、どうしたんだ。目は腫れてるわいつもより声は出てないわ泣くわ。散々にも程があるだろ」

「ちょっと、悩みすぎちゃって」


苦笑しながら言うと、龍也は溜息をつきながら「アイツらのことか」と言った。やっぱり、わかっちゃうかぁ。


「なんかね、私いま人生で一番のモテ期が到来してるみたい」
「笑えねぇよ。恋愛禁止だぞ、うちは」

「わかってるよ。私は別に誰かと、付き合うとか…今は、ないもん」
「いずれはあるのか」


わかんないけど、と伝えると、龍也とミラー越しに目が合う。


「誰に言われた」
「いわない」
「クビにはならねぇよ、付き合ってるわけじゃねぇんだから」

「…林檎と、嶺二と蘭丸、藍、トキヤに音也に、那月、わかんないけど…もしかしたら翔にカミュに真斗くん」


神宮寺以外全員じゃねぇか、と目を見開いた龍也は「…林檎もかよ」と溜息をついた。


「…俺もその中に入れとけ」
「は」

「やっぱりいい、気にするな」
「いや、気にするから!ちょ、これ以上悩みの種を増やさないで…!」


背もたれにぐだっと体を押し付ける。あぁもうこのままいったらコンプリートしちゃうんじゃないの…?いやそれは流石に…ないでしょ。ないと思いたい。


「このモテ期どうにかして」
「しらねぇよ、自分でなんとかしろ」

「この間の収録から蘭丸と嶺二と一言も話してないんだよねぇ…」
「珍しいな」


意外だ、と龍也は言う。普通に話せるなんて思ってた私は馬鹿だ。嶺二は会ったら、困ったように笑うだけ。蘭丸は目も合わせない。シャイニーや龍也、林檎がいたら挨拶はしてくるけど、それだけ。カミュと藍は今まで通りだけど、カミュは…心配してくれてるみたいで前よりも会話が多くなった気がする。


「無理すんなよ」
「ん、頑張る…けど、辛いなぁ」

「寿と黒崎か?」
「…寮で、嶺二とはよく練習室いってたし、蘭丸にはご飯作ってたけど、今はそれもなくなったし」


というか、二人と話せないことが、辛い。


「まぁ、時間が解決…とはいかないかもしれねぇが、根性見せろよセンパイ」
「…言われなくても見せてやるわよ」


会場について車から降りる。帰りも来てくれるらしいから、真斗くんに待っててもらって一緒に乗って帰ろうかな。


「いってきます」
「頑張ってこい」

「はーい、ごめんね帰りもよろしく」


おう、と手を振って、龍也は車を発進させた。

さぁ、仕事だ。


会場までの車で



(なにも考えてるな)
(いまは仕事、集中しなきゃ)



20130615

龍也さんのターン!
といっても話してるだけだけど。
そんなこんなであとはレン様でコンプリートしちゃいますーうわぁ、動かすの大変そうだぞー…。