せつない恋の歌




「本日のゲストは、一条麗奈ちゃんです!」

きゃぁぁぁああ!という女の子達の声と私の名前を呼ぶ男性達の声に、嬉しくなって笑顔で手を振る。カメラにも手を振るのを忘れない。長年の癖…というか、ファンになってくれた人、テレビを見てくれてる人への当たり前のサービスだ。


「こんばんはっ一条麗奈です!」
「久しぶりの出演になる麗奈ちゃんですが、今日は宣伝ですかー?」

「宣伝でーす!」


ちょっとは否定してよ!と司会者に突っ込まれて笑いが起こる。うん、大丈夫、大丈夫。


「今日はシャイニング事務所の後輩、QUARTET★NIGHTが来てくれてるんだよね?」
「はい、QUARTET★NIGHTも宣伝にきてますよー!」

「新曲?」
「新曲と、アルバムですね」


まだ情報が解禁されていなかったので、いま初めて言ったことなので視聴者や観覧の人は少し驚いただろう。「さぁ、QUARTET★NIGHTにも登場してもらいましょう!」とテンションが高い女性アナウンサーの声で、QUARTETの曲が流れて、彼らが歩いてくる。

きゃぁあ、と黄色い声が響き、4人は営業用のスマイルを浮かべて観覧席の人やカメラに向かって手を振っている。


「改めて、本日のゲストはシャイニング事務所から一条麗奈ちゃんとQUARTET★NIGHTの皆さんでーす!」


こんばんはー、と嶺二がにこにこと笑い、司会者はQUARTETの4人にアルバムについての説明を求める。

4人が順に説明して、作曲した私も一緒に説明しながらだったから、蘭丸と会話をすることもあった。けれど、仕事中だから切り替えている。先ほどの険悪が嘘のような蘭丸の顔。あぁ、やばい涙腺がおかしい。


「それでは、歌っていただきましょう

一条麗奈ちゃんの新曲です!」


位置についた私は、イヤホンから聴こえるインストにあわせて口を開いた。

切ない、ちょっぴり大人な恋の歌。
悩みとか、葛藤とか、辛さとか、幸せとか、全部詰まった歌だ。いまの自分と重なる歌詞ばかりで、勝手に涙が、流れた。



せつない恋の歌



(なんでとどうして)
(そんな恋の歌)


20130615

あるぇ…QUARTETとの絡みがない…!