いざ、本番です




リハーサルは散々だった。案の定目は腫れちゃうし、喉は痛いし。本番ではちゃんと歌わなきゃ、失敗なんて許されないんだから。生放送なんだから。


「麗奈」
「藍」
「どうして泣いたの?
その理由によってはボクの行動も変わるけど」


眉を寄せながら言った藍に、カミュはちらりと彼を見た。何も言わないあたり、さすがカミュだ。


「携帯で感動する話読んでたら、涙止まらなくなっちゃってさ」
「…キミがそう言うなら、そうだと思っておくよ」

「ごめんね、ありがと藍」
「別に、失敗されたら面倒だから」


納得いかない顔をしていたけど、藍はそこで話をやめてくれた。…のに、


「おい麗奈、なんだよさっきのリハ。やる気あんのかテメェ…」
「…ごめんね、本番は大丈夫だから」

「どうだかな、目腫らして…プロ失格じゃねぇのか。いつも先輩面してるくせに…なめてんのか?」


イライラしている蘭丸を止める人はいない。ここは私の楽屋で、カミュ、藍が先に来て、すぐ後に嶺二、そしてバン、と扉が開いて今、蘭丸が来た。
嶺二は何か言いたそうだったけどカミュに止められている。…わかってる。私、プロ失格だ。カミュも藍も嶺二も、思うのは蘭丸と同じことだろう。

恋愛で悩んで仕事を失敗するなんてあってはいけないことなのに。


「ごめんね、もう先輩と思わなくていいよ」
「そういうことじゃねぇ」

「シャイニーに言って、私の出演やめてもらう?その方がイライラしないでしょ」


笑って言えば、蘭丸はさらに怒りのボルテージがあがったようで鋭い目つきで睨みつけてきた。わかってる。わかってよ、そんなことできないし、しない。


「…なんてね。
もう大丈夫、気にしないでいいよ」
「は…馬鹿じゃねぇの」

「ん?」
「…もういい。
ガッカリだ、お前には」


荒々しく扉を閉めて蘭丸は私の楽屋を出て行った。嶺二は何もいわずに、ちらりと私を見たけれど困ったような、呆れたような顔をして蘭丸の後を追って出て行った。


「…愚か者」
「しってる」

「どうするつもりだ。
本番はアイツらと話すこともあるはずだぞ」
「なんとかなるわよ、プロなんだし」


はぁ、と溜息をついたカミュは先ほどのように私の頭を撫でる。やめてよ、また泣きそうなんだから。


「ふーん…、さっき泣いたときカミュがいたんだ?」
「…ん、そだよ」

「なんで?さっきの話が嘘なのはわかってたけど、泣いた本当の理由は?」

「…それは、」


「一条麗奈さん、QUARTET★NIGHTの皆さん、本番準備お願いしまーす!」


口を開いたと同時にスタッフに呼ばれて口を閉じた。


「いこっか」
「大丈夫なの?」

「もちろん、最低最悪でも、一応は先輩でプロだからね。本番は絶対失敗しないよ」


楽屋を出て、3人並んであるく。スタッフにもう一度謝罪して、本番に臨んだ。


いざ、本番です



(大丈夫、本番は)



20130615

うわぁシリアス…!
あれー、この回で歌番組編終えて、またまぁ様のターンのはずだったのに…!

いい加減5話突入したいのに!