「麗奈ちゃんっ」
「わ、あ…嶺二」
「久しぶりー」
トキヤと別れた後、なんとなく部屋に戻るのが嫌で寮内をふらふらと歩いていたけれど。こんなときは曲を作ろう、なんて思った私は練習室に足を向けていた。ら、突然後ろがぎゅっと抱きしめられたのだ。
声を聞けばすぐにわかる相手だったから良かったけど。…というか、嶺二と顔を合わせるのが一週間ぶりということに驚いた。
「珍しく会わなかったね」
「そうだねぇ…麗奈ちゃんと会えなくて枕を濡らす日々だったよ…!」
大袈裟に泣きまねをするものだから、くすりと笑ってしまった。そういえば、最後に会ったときは蘭丸と…なんていうか気まずい感じで別れたから、気まずいのかなって思ってたけど。やはり嶺二、大人だ。
「最近、また告白されたんだって?」
「、?!」
「あ、図星?カマかけてみただけなんだけどなー」
楽しそうな声色。けれどそれとは逆に、嶺二は先程よりもきつく私を抱きしめた。どく、どくと私の心臓は早くなっていく。
「僕言ったよね?
誰のものにもならないでって」
「う、あ…」
「まぁ、まだ誰かと付き合ったって聞いてないからいいんだけど、」
けど、もし誰かと付き合ったりしたら…何するかわかんないかも。
くすりとまた嶺二は笑う。その嶺二の腕を振り払って、私は嶺二から離れた。嶺二の顔を見ようと、顔を上げると嶺二の目は悲しみに染まっていて。口は笑ってるのに、目は、泣いていた。
「…嶺二、」
「あはは、大丈夫だよ。
さっきのはジョーダン!」
「違う、違うの」
ねぇ、なんで無理して笑うの。無理をさせているのは私だと自覚しているけれど、でも。
「嶺二、」
「ん、なーに?」
「私、もし誰かを好きになって、付き合うことになったとしても、嶺二のことは大事だよ」
「それって…、僕は遠回しにフラれたってことかな?」
「ちが、違う!そうじゃなくて、
これだけは誓える。私は、彼らが一人前として世間に認められるまで誰とも付き合うつもりない」
言うと、嶺二はきょとんとしてから、声をあげて笑った。
「あははっ…やっぱり、麗奈は麗奈なんだね」
「どういう意味?」
「ん?僕が好きになった麗奈だなって」
ゆっくりと私に近付いた嶺二は、私と目線を合わせるように屈むとコツリ、額を合わせた。
「僕は待てるよ、オトナだからね」
「嶺二」
「僕を好きになる可能性は0じゃないんでしょ?それなら、君が僕を好きになるように全力を出すだけ」
「ありがと、」
「麗奈だからね
あ、けど」
「ん?」
「これくらいは、許してほしーな」
「え、なっ……れい……んんっ」
「ご馳走サマっ」
にっこり、先程の顔が嘘のように嶺二は綺麗に笑って、去っていった。残された私は、嶺二が歩いていった方を見つめているしかできなかった。
不意打ちのキス
20130611
久々のれいちゃんのターン!
あれ、本当は相手を決めるまでキスとかさせないつもりだったんだけどなぁ!(←)
そしてれいちゃんが病んでる感じがして焦っています。こんなはずじゃなかったのですが、
まだ絡んでいないレン様、セシル、ミュー様をどうしようかと私は泣きそうになりながら考えております。