「この声、一条麗奈?!」
「…ほんと、ほんとだ!」
「蘭丸と麗奈がデュエットとか貴重すぎるって!」
蘭丸に誘われてきた音也と、音也に誘われてライブにきたST☆RISHのメンバーは、蘭丸達のバンドのファンに揉みくちゃにされながらもなんとか前の方を陣取ることができた。場違いな気がして仕方ない春歌は、音也の服の裾をぎゅっと握ってライブを見ていた。
「こんばんはー!一条麗奈でーす!今日は、蘭丸達に許可もらったから参加させてもらいましたー!」
黒髪に金メッシュ、黒縁の眼鏡をかけている麗奈にST☆RISHと春歌は不思議そうな顔をする。声は麗奈なのに、見た目が全く違う。
「あ、蘭丸蘭丸」
「…あ?」
「君の可愛い後輩達、来てるよ?」
ちらり、蘭丸はST☆RISHを見遣る。ふん、と鼻で笑うと、彼らを気にするそぶりを見せずにベースを撫でた。
「お前が誰かわからねぇんじゃねぇのか」
「へ?あぁ、今ウィッグ被ってるしねぇ」
きゃあきゃあと黄色い声がライブハウスを包む。中には男の人の声も聞こえてくるが、基本的には女の子が多い。
だからかST☆RISHは色々な意味で目立っていた。
「すごい熱気ですね…」
「あぁ、俺酔いそ…」
「こーらST☆RISH!
出ていくのは許さないからね!」
キン、とマイクの高い音に眉を寄せたST☆RISHの面々は麗奈を見た。にやり、と笑う麗奈に嫌な予感がしたのは蘭丸とトキヤだ。
「ねぇ、蘭丸」
「却下」
「お願い、ね?」
「絶対に嫌だ」
私の言いたいことを理解したらしい蘭丸は頑なに拒む。けれどもう手は打っておいたし、あと一息なのもわかっている。
「ね、蘭丸」
「……、」
「ひとつだけ蘭丸のお願い聞くから、お願い」
ね、と見上げると蘭丸はぐっと言葉に詰まって後ろを向き、メンバーに向かって私の言いたかったことを言った。メンバーは笑って頷いたので蘭丸は私の頭をばし、と叩き睨みつけてきた。
「どういうことだ」
「ん?皆にはもう言ってあったの」
ごめんね、と笑うと蘭丸はため息をついてST☆RISHを睨みつけた。
「テメェら、さっさと上がって来い」
蘭丸の言葉に、ライブハウスが揺れた。
用意周到すぎて
20130531
すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません!
1週間更新していませんでした。
実家に帰ってきていて、熱を出してしまっていました。
また更新頑張っていきます。