おかえりの魔法




なになに、私は主人公を健気に思う女の子、かぁ。誰かを、思う…そっか。今までも恋愛ドラマに出たことはあるけど、やっぱり難しい。


「麗奈さん?」
「あ、春歌」


どうかなさったんですか?と問われて、真斗くんのオーディションのことを話すと、頑張ってもらいたいですねと花のように笑った。


「麗奈さんも出演なさるんですか?」
「そうよー、主人公の相手役なの」


見に行ってもいいですか?と少し不安げに聞いてきた春歌の頭を撫でて勿論よ、と言えばぱぁっと顔が明るくなってありがとうございますと笑った。


「真斗くんに受かってもらわなきゃいけないから、練習も厳しくいかなきゃなぁ」
「指導、なさるんですか?」
「うん、私は決まってるから本当はいけないことかもしれないけど、ね」


へらり、笑って言えば春歌は少し考えてから「でも、狡くても、それでも受かってほしい」と小さく呟いた。私は、利用できるものは利用するべきだと思っている。
私達先輩を踏み台にして、高みを目指してほしい。上に行くんだ、という意欲をもってほしいのだ。


「春歌も、私から色々なこと盗んで、私に勝てるようにならなきゃね」
「、はいっ」


春歌といると、やっぱり心が安らぐ。不思議だけれど、この子の笑顔は暖かくて、安心させられるんだ。疲れていても、この子のお疲れ様です、おかえりなさいという言葉で頑張れる。


「麗奈さん」
「ん、なぁに?」

「今日、一緒にピアノを弾いてくれませんか?」
「ふふ、いいよ連弾しようか」


じゃあまずは晩御飯を食べて、それから練習室にいこう、と言うと春歌は晩御飯できてますっ、とキッチンに走っていった。ありがたい、そしてすごく嬉しい。


「わ、今日オムライス?」
「はい、チキンライスではなくてガーリックライスにしてみました」

「おいしそう…!」


いい匂いでお腹がぐう、と鳴り春歌と笑い合って椅子についた。



おかえりの魔法



(一人じゃないって思えるの)



20130519

ぐはぁぁああああ!
旦那の友人達と麻雀していて更新ができませんでした…くそぅ