「オーディションかぁ」
「そうそう、まーくんったら是非って言われたみたいよ?」
ある日のシャイニング事務所社長室。あれから、林檎とは気まずくなるかと思ったけどそうでもなく、というか林檎が普段通り接してくれてたからなんだけど今まで通りで。(や、嘘だ違う、スキンシップは激しくなった)
「ミス一条は既に出演が決まってマース!」
「…え、」
さも当たり前だというように口を開いたシャイニーに、私は開いた口がふさがらなくなった。
「待って仕事セーブは…!?」
「麗奈は監督からの熱烈ラブコールよ、諦めてね?」
「…う、わかったわよ…」
言われてしまえば仕方がない。最近は春歌も作曲は順調みたいだし、私も仕事を増やしていこう。雑誌の取材も最近は断ってばかりだ。
「あ、来たわねまーくん!」
真斗くんにオーディションのことを説明すると彼の顔は驚きで染まっていた。自分を、と言ってもらったんだ嬉しいに決まってる。
私はオーディションの際、参加者の演技テストに付き合うことになっているらしいから、一緒に台本を貰った。舞台だから、練習も大変だろう。
「頑張ってね、オーディション」
「…はい」
「ていうか、受かって?」
言うと、真斗くんは何言ってんだアンタ、って顔をされた。確かにそうなんだけど、うたプリアワードをとるつもりならこれくらい受かってもらわないと。
「ラブシーンするなら、知らない人よりも君のほうがいいし…っていうか、真斗くんとしたい」
「な、」
顔を真っ赤に染めた真斗くんは口をぱくぱくと開閉させる。…まるで魚だ。
「応援の言葉として、受け取ります…しかし、」
「ん?」
「女子がそのような事を男に言うのはいただけない!」
「あ…はは、ごめん」
顔が赤いから、そんなに怖くはないけれど、すごい剣幕だ。
「練習、付き合うから頑張ろ」
「……それは、狡い気がします」
「なんで?」
真斗くんが言うには「出演が決まってる人間、相手役が練習に付き合ったら他のオーディション参加者に申し訳ない」とのこと。
確かにそうかもしれないがシャイニーには禁止されていない。逆に受かれと言っていたのだ。私も演技を掴みやすいしちょうどいい。
「真斗くんは真面目だなぁ」
「…そんな、ことは」
「気にしなくていいの。利用できるものは利用しなさい」
ぐ、と口をつぐんだ真斗くんは、はいと小さな声で言った。
「手伝うからにはがっつり指導するし、絶対受からせるわよー?」
「覚悟しています」
真斗くんの顔はやる気が伺えた。…大丈夫だろう、きっと。
オーディション
20130517
まささまのターン突入!
最近先輩が出ていないので先輩もでばらせたいです。