一つの決意。




無言の時間が、苦しかった。

林檎が心配で、けれどあの場にいるのがなんだか嫌で。部屋を飛び出して寮に帰ろうと思ったんだけど、けど林檎は熱があるのに放っておけなくて。

きっと、誰かに相談したらその人に怒られるんだろうなぁと思う。林檎には、帰っていいと言われたけど、けど…心配だから。













「林檎、食べたら薬飲んでね」
「これ、粉でしょ?」


そうだよ、と言えば林檎は嫌そうな顔をした。粉薬が苦手なのは私もだ。けれど飲まないと治るものも治らない。そう言えば、林檎はわかったわ、と嫌そうに薬を飲んだ。


「…にっがーい、」
「良薬、口に苦しっていうでしょ」

「むー…」

「けど、私が来たときより元気になってよかった」


今は朝。一晩寝たら微熱程度まで下がったようで安心した。顔色もそこまで悪くない。


「ごめんね、朝までいてもらっちゃって」
「いいの、だって林檎だもん」


私がそう言うと、林檎はきょとんとしたが、次の瞬間くしゃりと、寂しげに笑った。


「駄目よ、そういうこと軽々しく言っちゃ」
「え?」

「…期待しちゃうから。
俺は男で、麗奈が好きなんだ。あまり期待させるようなこと、言わないで」


そんなつもりじゃ、なかった。…ただ心配だから、じゃ駄目なの?
告白されたから、もう今までと同じじゃなくなるのはわかってた。けど、私にとって、林檎は


「林檎は、大事な人だよ
それが恋か、私にはわからないけど…林檎が、大事」


…龍也も、他の後輩も同じ。言うと、林檎はわかってるわ、と笑った。ごめん、ごめんなさい。私はまだ、恋とか、わからないんだ。


「林檎に好きって言われて嬉しかった。ドキドキした、けど…けどね、」
「いいわ、言わなくても」


今までベッドに腰掛けていた林檎は立ち上がってぐっと伸びた。カーテンから差し込む太陽の光で林檎の髪がきらりと光る。あぁ、綺麗だなぁ。


「…他の子にも、言われてるんでしょ?」
「、」

「ゆっくり考えて」


恋愛禁止条例、そんなの今気にしてないのだろう。
いや、いざバレても、林檎ならなんとかしそうだ。他の子達も。

だから、私は真剣に考えなきゃいけないんだと思う。


一つの決意。



(考えよう、考えなきゃ)



20130516