ぴよちゃんを抱えた那月くんが扉の前ににこにこと笑って立っていた。
「こんばんは、どうしたの?」
「麗奈さんがぴよちゃん好きだって聞いたので、プレゼントしようと思って、」
大きなぴよちゃんのぬいぐるみを差し出してくれる。そろそろと手を出してそれを受け取れば那月くんは嬉しそうにまた笑って、可愛いですよねぴよちゃん、と言った。
「うん、ふかふかで、可愛い…」
ぎゅう、と抱きしめると那月くんがくすりと笑ったので疑問符を浮かべてぴよちゃんを離して那月を見上げれば、
「ぴよちゃんも可愛いですけど…ボクは麗奈さんのほうが可愛いと思いますよ?」
「っ、もう…那月くんたらお上手なんだから…!」
那月くんが散歩でもしないか、と笑ったので断る理由もないから頷いた。夜だから少し冷えるけれど、ちょうどいい気温だ。
「那月くん、悩み事ある?」
「…え?」
「なんか、暗いなぁって」
ふと思ったことを言ってみると那月くんは困ったように笑った。ないですよ?と。けれどその顔は、寂しそうで。
「うそはダメ。…言ってみて?」
笑ってみせる。那月くんは苦笑をもらしてから、小さな声で呟くように言った。
「ボクも、麗奈さんと仲良しになりたかったんです」
「那月くん」
「翔ちゃん、麗奈さんの話ばかりで、羨ましくなって」
すみません、と眉を下げる那月くんのお腹をぐーで軽く殴ると、那月くんは驚いて「麗奈さん?」と声をあげた。
「ばか、なんで謝るの?
那月くんは悪いことしてない」
「でも、」
「でもじゃないの。
…友達になろ、那月くん」
改めて言うのはおかしいけど、と言えば、那月くんは嬉しそうに笑って私をぎゅっと抱きしめた。
やきもちやき。
20130512
ぎりぎり…!