彼が男になる時





「麗奈ーっこの服はー?」
「林檎チョイスで好きな服詰めてー」

「もう、本当に好きにしちゃうからね」
「おねがーい!」



生放送は無事に終わって、龍也や嶺二、そして藍からお疲れ様と労いのメールが届いてホッコリしたのも束の間。明日には寮に移動しないと、七海さんも…っていうかマスターコースに入る子達は明日入寮するからそれに合わせなければいけない。林檎と龍也の同期である私は、新人やマスターコースを担当する人達よりも先輩だから、一応責任者として寮に入るらしい。本来は一番最初に入るべきだけれど、決まったのが今日だから、前日には無理だけど彼らより早い時間に入っておかなきゃいけないと思って、林檎に頼み込んで荷造りを手伝ってもらっているところである。



「あーもうっ、お腹空いた…」
「ごめんごめん、ほら、パスタ作ったから食べて?」


言うと、林檎は目を輝かせてテーブルにつき「いただきます」と声を弾ませて手を合わせた。これが男なんだから、本当にいつも驚かされる。いや、でも彼を女の子だと思ったこともないけど。どんなに可愛くても、身長も、内面もちゃんと男の人だ。…それに年上だしね。


「おいし?」
「おいしいっ、また腕あげたでしょ」
「そう?なら嬉しいんだけど」


へら、と笑って自分もパスタを口に運ぶ。寮では自分で作ることになりそうだ。基本的に自炊だからいいけど、寮は森っていうか…無駄に広い事務所の敷地の奥にあるから買い物が大変そう。車移動は可能だってことが救いである。


「ご馳走さま、さてー…ラストスパートいきますか」
「ん、やっちゃいましょ」

「あ、林檎は座ってていいよ。疲れてるんだから」
「あら、それは麗奈もでしょ?」


でも、と言葉を詰まらせていると、私より10以上大きな背の林檎がふわりと優しい笑みを浮かべて「一緒にやったほうが早く終わるわよ」と頭を撫でてきたので、私は頷くしかできなかった。










「終わったぁ…うあー…」
「荷物多過ぎよ…!」
「や、服に日用品に仕事用品に…って分けてもまだ足りないくらいなんだけど…」

「まぁ…そうよね、シャイニング事務所のNo.1作曲家で大人気アイドルだもん」


悪戯に笑った林檎に、そっちだって大人気アイドルじゃんと口を尖らせて言うと「当たり前じゃない」と返された。くそう、


「さ、終わったみたいだし帰るわね」
「え…泊まっていけばいいのに」

「…あのねぇ、男なのよ?」
「や、でも遅いし…疲れてる林檎帰すのは、嫌だなって」


ぼそぼそとつぶやくように言って俯くと、林檎は深い溜息をついて私に近付く。頭を撫でられてゆっくり顔を上げると困ったように笑う林檎がいて、



「男は狼なんだよ、麗奈」
「っ、りん…、」


「このまま泊まったら、俺…何もしない自信、ないよ?」


ぞく。
いつもと違う、艶のある男の声。可愛い声じゃなくて、色気のある声に鳥肌が立つ。怖いとかそういうことじゃ、なくて。


「だーかーら、帰るわね?」
「う、うん…わか、た」


じゃあね、と笑って部屋から出ていった林檎を見送った私は、ぺたりと床に座り込んで耳を押さえた。うわぁああ、誰、あれは誰えぇぇ!林檎だけど、林檎じゃない。

男だって、わかってたけど。うわぁぁあっ



彼が男になる時



(やばい、眠れない)



20130416

どうしてこうなった/(^O^)\
林檎ちゃんが勝手に動く不思議そして一人称忘れたやっばい。

まだ3話ですけども!なんでこうなったまじw
林檎ちゃんが好きすぎるせいですねわかりますごめんなさい