意外な、来訪者



翔くんは、跳べた。
顔付きが変わっていたんだ。聞いたら、春歌が関係してると言う。そっか、春歌が…うん、青春だね。


「お疲れ、翔」
「っ、今、名前」

「君の頑張り、認めてあげる
私も、ライバル…かな?」


言うと、翔は嬉しそうに笑った。差し出した手をぎゅっと両手で握った彼は、ありがとうございました、と声を震わせた。


「さて、どうして跳べたか、詳しく聞きたいなー?」
「え…」
「春歌が関係してるのはわかったけど…っていうかだいたいわかるけどね

春歌が来て、落ちそうにでもなったんでしょ?」


なんでわかるんだよ…と眉を下げた翔にくすりと笑い「皆、春歌にパワーもらってるもんね」と言うと、きょとんとした翔は、吹き出した。


「確かに、跳べたのは七海のお陰でもあるけど…仕事、全体的にうまくいったのは麗奈さんのおかげ」
「ふふ、そう思ってくれるのは嬉しいな」
「それに、わかったんだ」


何を?と問うと、翔くんは真剣な目で私を見た。


「先輩達やトキヤが、麗奈さんのこと好きになるの」
「え?」

「誰にでも、平等に、優しいもんな」


そんなことないよ、と言うと「無意識かよ…」と溜息をつかれた。どういう、こと?


「…優しくされたら、勘違いするし、期待するから…やめろよな!」

「え、と」
「返事!」
「うひゃ、はいっ」


びし、と指差されて思わず返事をすると、へらりと笑った翔くんが、帰ろうぜと私の頭をぽんと叩いた。うん、と二人事務所の車に揺られて寮につき、放送日は一緒に見ような!と言われて部屋に帰った。



「麗奈さん、お疲れ様ですっ」
「春歌!ありがと、お疲れ様ぁ…」

「だいぶお疲れですね、」


春歌癒して、と笑うと慌てて「私にできるでしょうか…でも、でも頑張りますっ」と意気込んだ春歌にくすりと笑って、抱きしめてみた。ぴた、と固まった春歌に「曲できた?」と聞けば、春歌は少しだけできました、と声のトーンをあげた。


「お疲れ様、春歌」
「麗奈さんも、お疲れ様でした」


顔を見合わせて、二人で笑った。



コンコンとノックが聞こえて春歌が私から離れて扉を開けると、「麗奈さんにお客様です」と笑顔で言われたので、着替える前に扉から顔を出した。
ら、那月くんがにっこりと笑って立っていた。



意外な、来訪者



(っ、ぴよちゃんだ…!)



20130511