可愛い子が好き




ぱたぱたと廊下を駆けて、翔くんの待つ練習室に向かう。今度は人に会うことなく辿り着けたのでホッと一息ついた。

かちゃ、と扉を開けると翔くんは白い歯を見せて、お願いします!と笑った。


「じゃあ早速、発声からいこっか」
「はい!」



翔くんは、真剣に取り組んでいた。アドバイスすればそれをすぐに実践して上手くなるし、向上心がある。龍也と共演ってことで更に気合いが入っているんだろう。


「うん、いい感じ
けど今のところ、もうちょっと苦しげに言ったほうがいいかな。

なんで、どうしてっていう、わかってもらえない、辛いって気持ちを出して言ったら、もっと良くなるよ」


アドバイスする度、翔くんは目を輝かす。そして元気に返事をして次は良くなったと言えば、嬉しそうに笑う。…この子も可愛い。


「翔くん、演技上手い」
「ほ、本当か!?」
「うん、最初から上手いと思ってたけど、さっきよりうんと上手くなってるよ」


よっしゃあ、とガッツポーズした翔くんが可愛くて思わず吹き出すと「なんで笑うんだよ!」と口を尖らせる翔くん。


「だって可愛いんだもん、翔くん」
「な、可愛くねぇ…っ…ですよ」

「ぷ、ふはっ…無理に敬語にしなくていいのに…っ」


お腹を抱えて笑うと翔くんは顔を赤くしてそっぽを向いた。



可愛い子が好き



(仲良くなれたかな)




20130507

みじかい