生意気な後輩達


七海春歌のマスターコースを担当すると決めたはいいものの、寮へ移動するには今いる部屋をどうにかしなければならない。林檎に言ってみれば、マンションは事務所名義だし荷物も多いのだから、必要な物のみ持って行けばいいじゃないか、と。林檎の意見を採用して仕事が終わったら早速荷物を纏めよう。一人でまとめられるか不安だから林檎についてきてもらおうかなぁ。



「あ、麗奈ってこれから仕事でしょ?」
「そうだよ…って林檎も私と同じ番組に出るじゃない」
「あら、忘れてたわ」


可愛らしく笑った林檎に苦笑して立ち上がった。続いて林檎も立ち上がり事務所から出て行こうとするとマスターコースを担当する後輩と遭遇した。


「あ!麗奈ちゃん発見!」
「嶺二、おはよ」
「おはよ、これから仕事?」
「うん、いってくる」

「いってらっしゃーい、しっかり頑張ってきてねんっ」

「はいはい、じゃあね」


ちゅ、と投げキスを飛ばす嶺二に苦笑して歩き始めようとするも、ぐい、と手首を引かれてまた立ち止まる。真っ白い手に捕まれて、その相手に目をやる。


「なーに、藍」
「別に、特に理由はないけど…今日の生放送、見るから」


ヘマしないでね、と無表情のまま言った藍にくすりと笑って「ありがとう」と言えば、藍は手首を離して嶺二の後に続いた。カミュはぽん、と私の頭に手を乗せてさらにその後に続き、残ったのは蘭丸だ。


「…コケんなよ」
「あのね、先輩に対する態度なってなさすぎなのアンタは!」
「うるせぇな…どうだっていいだろ」

「よ く な い…ってちょ、蘭丸!」


頭に手を置いたと思ったらぐしゃぐしゃにされて、これから生放送番組に出るというのに酷い後輩である。彼は年下である。背は高いからいつも見下ろされる…ってこれは仕方ないとしても、この世界で先輩、年上に対しての態度じゃない。近々ヤキをいれに行かなきゃいけないだろうなぁ…面倒くさいけど。先輩も威厳もなにもなくなってしまうじゃないか。

マスターコースの担当になったからには彼らにも先輩に対する態度を改めるよう、事務所の、そしてこの世界の人間としてまた教育のし直しが必要に思う。


「終わった?」
「林檎ぉ…林檎からも言ってよね、先輩に対する態度がなってない!って」

「言わなきゃいけないのもわかるけど、仲良しでいいじゃない」
「だからよくないんだってば…!」



林檎と共に事務所の車に乗ってテレビ局まで向かう。今日はクイズ番組らしいから、少し気合いを入れて。来週発売する新曲の宣伝も兼ねているからヘマなんてできない。


「ねぇ林檎」
「ん、なぁに?」

「たまに遊びに来てよね」
「ふふ、行ってもいいけど私仮にも男だからね?」


わかってるの?と笑う林檎に、わかってるわよ、と返せば林檎はくすりと笑って「行くとき連絡するわね」と携帯をちらつかせた。




















林檎とは当たり前だけど楽屋が違うから私の楽屋の前で別れて、当てられた衣装に着替えメイクを施していた。ら、


「あれ、メール…誰だろ」


ヴヴ、と携帯が震えてメールの受信を知らせた。開けばそこには、先ほどぶっきらぼうに、加えて後輩とは思えない態度で私を馬鹿にしている様子の蘭丸からのメールが届いていた。


頑張れよ。
ただ一言だけだったけれど、嬉しくなったのもあり、可愛いと思ったりもして。素直じゃない、彼も私にとっては大事な後輩なんだと改めて思った。


さぁ、お仕事頑張ってきますか!


生意気な後輩



(こんばんは、一条麗奈でーすっ)




20130416

ランランを若干贔屓にしてしまった。ツンデレだと思うんだ彼はふへへ(←)