濃厚キスシーン



監督のカウントが始まり、撮影が始まる。

私演じる香奈は、酔ったフリをしてトキヤ演じる誠にぶつかり、彼が介抱しようとすると、するりと首に腕を回して唇を押し付ける。


「このまま、一緒にいて…?」
「っ、」


こてん、と彼の胸に顔を寄せる。色香に惑わされ、誠は香奈に堕ちていくのだ。抜け出せないくらい、深く、深く。


「ダメ?」
「…いや、」


再び顔あげて彼を見つめる。ゆっくりと近付いてくる顔に、目を閉じる。


ちゅ、と軽いリップ音がして、あぁキスしてるなぁなんて遠くで考える。私いま、香奈なのだ。


「ん…っ、」


ちゅ、ちゅ、と啄むような軽いキスから、だんだんと角度を変えて貪るようなキスに変わる。これは演技、演技と内心いい聞かせながら、流されてしまわないように意識を繋ぐ。


「んん…っ、ふ、っ」


息が苦しくなって、口を開けると、ぬるりと生暖かいトキヤの舌が咥内を犯す。くちゅり、と音がなって、体中が熱くなる。演技、演技だよ私。


「は、…ふ、…っ」


ようやく離された唇。たらりと、どちらのものかわからない唾液が口の端を伝い、少しぼうっとしながらトキヤを見つめた。


「カット!OK、二人共最高だよ!」

「あ、ありがとう、ございます」


監督の声で我に返る。危ない、演技なのを忘れるところだった、やばい。というか、アイドルという職に就いていて濡れ場があって本当にいいのだろうか。ファンが離れていくとか、ないのだろうか。シャイニーが決めたことに文句はないし、いまさら言ったところでどうにもならないけれど。

確か、前代未聞、と報じられていた気がする。


「大丈夫ですか?」
「う、うん」


ぽん、と頭を撫でられてトキヤを見上げるが、唇に目がいってしまってダメだ。すぐに俯くと、トキヤはくすりと笑って私の耳元に顔を寄せた。


「可愛らしかったですよ。危うく、演技だというのを忘れそうなほど、ね」
「、っ?!」


トキヤの言葉に顔に熱が集まるのを感じた。最悪だ、今のトキヤの顔は悪戯が成功した子供のような顔で、からかわれたんだと悟る。


「トキヤ…!」
「…本当ですよ、」

「…ばか」


また、くすりと笑ったトキヤの背中を軽く叩いてスタジオの端で見ていたST☆RISHと春歌の元に歩いていった。すると、レンくんと那月くん以外は皆顔を真っ赤にしていて、翔くんに至っては私を見ていなかった。他の人は口をぱくぱくと開閉させて、まるで魚みたいで先程の恥ずかしさが少し消えて、笑えた。


「すごいねレディ、いつもとは全く違ったよ」
「いつもの私は色気が全くないと?」

「そういうわけじゃないけど…オレはさっきのレディのほうが好み、かな」
「はいはい、もうレンくんは…」

「イッチー、途中から演技じゃなかっただろう?」
「「な、」」

「目が、変わったからね」


突然のレンくんの言葉にトキヤは頬を赤く染めた。や、やだ、レンくんたら冗談がお上手だなぁ。


「は、春歌、どうだった?」
「え、ええええと、あの、わ、わた、私には…し、刺激が強すぎて…!」
「ふは、確かに、これ官能小説のだから、春歌達が見れないドラマだからねぇ、」
「か、官能小説ですか…!?」
「うん、だから深夜のドラマだよ」


世界が、違いますぅ…と湯気が出そうなくらい真っ赤な春歌が可愛くて、頭を撫でた。










「…役として、じゃなくてレディとして見たほうが、役に入りやすいから、かな?」

「…さぁ、どうでしょうね」
「あれ、はっきりと否定しないんだ?」


なんて、レンくんとトキヤが会話をしていたなんて、私は知らない。



濃厚キスシーン



(くらくらした、)
(ドキドキした、)



20130502

うわぁぁぁああああやっちまいましたぁぁあああああ。

いいんだろうか、一応キスシーンだけだからR15とかじゃなくて大丈夫、ですよ、ね?

ベッドシーンはR18いれます、表記に。

R15にならないように、表現を柔らかくしたつもり、です、はい。