するすると木に登り、う の札を取ろうとしたが、翔くんが木を揺らしたことでセシルくんは体勢を崩し池に落ちた。
「え、ちょ、セシルくん…!」
「だ、大丈夫でしょうか…!」
私と春歌は心配になってセシルくんの場所まで小走りで向かう。彼は泳げない、と焦りながら言うも、その池は浅くセシルくんが立ち上がれば膝下ほどで。
「ひどいです」と涙ながらに言ったセシルくんはふと右側にピチピチと跳ねる魚にびくついて、「にゃぁぁああああ」と叫び、猫は駄目なんです、と先ほどよりも早く走り去った。
そんなセシルくんに嶺二は笑って、蘭丸は溜息をつき、藍は冷静にセシルくんについて話していた。うん、やっぱりセシルくんは素質あるなぁ。容姿も、声も、歌も、身体能力も申し分ない。これで、アイドルになるという意思があってくれたのなら、文句なしだったんだけど。
「麗奈さん」
「ん?」
「セシルさん、大丈夫でしょうか…」
「気になるね…けど、全身びしょ濡れだから寮に帰ってくると思うよ?」
そうですよね、と笑った春歌の頭を撫でると彼女は安心したのかさらにへにゃりと笑った。かわいい。
「あ、そうだカミュ」
「…なんだ」
「セシルくんに先輩を敬えとか言うなら、私を敬いなさいよね?」
口を尖らせてカミュを見れば、フンと鼻で笑い「考えておいてやる」と上から見下ろされた。…うん、もうカミュには遠慮しなくていいかなぁ。
「…もうお菓子作ってあげないか「努力してやる」
私の言葉に被せてきたカミュを見ると、プライドが許さないのだろう不機嫌だったが、腕を組んで目を閉じながら言ったカミュにくすりと笑い「それなら仕方ないね」と行った。するとカミュはかっと目を開いて私の肩に手を置く。きょとんとしていると、カミュは口を開いた。
「明日はミルクレープで許してやる」
「はい?」
「ミルクレープだ。もしくはチーズケーキ」
「……わかったわよ」
それでこそ俺のメイドだとか意味のわからないこと言い出したので「二度と作らなくていい?」とにっこり笑ってあげたら「すまなかった」と謝ってきた。プライドよりも甘いものというカミュはすごいと思う色々な意味で。
「さ、皆かるた回収してきてー」
「…え、」
「君達が使ったんだから当たり前でしょー?それとも、この敷地10周する?二択ね」
片付けます!と声を揃えて言いST☆RISHは走り出した。うん、偉い偉い。
「麗奈ちゃん扱いうまくなったねー」
「まぁね…」
「疲れてる?」
「そりゃあ2日連続で抱きしめられたら精神的にクるわよ…」
「麗奈、部屋で休んだら?」
「や、実はこれから撮影あるの」
ふぅ、と溜息をつくと近場にあったかるたを持ってきたトキヤが口を開いた。
「私と共演のドラマ、でしたよね」
「そうだよ、トキヤが相手のヒロイン」
「え?!てことは…ら、ラブシーンとかあったり…?」
「するねぇ」
「しますね」
嘘ぉおお!と大袈裟に崩れ落ちた嶺二を冷めた目で見る藍にどうでも良さそうな蘭丸。カミュはまだ片付けが終わらないことにイライラしているのか「早くしろ愚民共!」とST☆RISHに叫んでいた。
「まだ時間あるからセシルくん見つけたら一緒に行こう?」
「…そうですね、目的地は同じですから行きましょうか」
その時のトキヤはふわりと柔らかい笑みを浮かべていた。が、嶺二達をちらりと見てどや顔していたそうな。(2回目である)
かるたの行方。
(風邪ひかなきゃいいけど)
20130501
5月になりましたね…!