林檎の黄色い服




「…何してたの?」



藍の声が、部屋に響いた。
QUARTETの皆は、それぞれ林檎を見つめ、林檎は焦るそぶりもなく何もないわよ、とにっこりと笑う。お前達には関係ないとでも言うように。



「何もねぇなら、なんでアンタがこいつ抱きしめて、こいつは泣きそうな顔してんだ」
「こんなところで、度胸あるねぇ」

「シャイニーが麗奈の服破っちゃったのよぉ…だから私が服を貸してあげようと思って。

今から麗奈着替えるから、皆出ていってくれる?」


普段の林檎から想像できないくらいの気迫で四人を見る。有無を言わせない林檎の言葉に、蘭丸はイライラした様子で口を開いた。


「麗奈」
「…林檎が言ってるのはほんとだよ、シャイニーに破られたの
林檎は、服を貸してくれるだけで」


舌打ちをした蘭丸は部屋から出て行き、嶺二もそれに続いた。カミュはまだ林檎を睨みつけていたが藍に背中を押されて渋々部屋を出た。


「もしリンゴがやってたなら、ボクは許さなかったけど…違うならいいや

麗奈、外で待ってるから一緒に帰るよ」

「ん、わかった」


す、と目を細めた藍は林檎を見やる。林檎は、苦笑して藍に手を振り藍は部屋を出ていった。



「はぁ…ほんと、麗奈は人気すぎて困っちゃうわぁ」
「はは、けど林檎、冗談でもさっきのはやめてよ…」

「あら、からかうつもりでやったんじゃないわよ?」


笑みを深めた林檎に、ぴた、と止まる。ぽふ、と頭に手を置かれて少しだけ見上げると、林檎は悪戯に笑って耳元に顔を寄せた。


「邪魔されなかったら、もっとすごいことしちゃってたかも、」
「っ?!」

「ふふ、だから麗奈にしたら良かったのかも、ね?」


妙な色気を感じて、私は顔を真っ赤にした。くすりと笑う林檎は、本当に楽しそうに笑って、私は俯いて林檎の顔を見れなくなっていた。


「さ、藍ちゃん達待ってるようだし…服、貸すわね」
「ありがと、」


よっ、と今着ている服を脱ぎ出した林檎に、私はくるりと後ろを向く。林檎も男の人なんだから、見れるわけない…!


「はい、コレ着て?」
「あ、う…あり、がと」


振り向けなくてただ手を伸ばして服を掴もうとするも、すか、すか、と空振りばかりで掴めない。見なきゃ受け取れないけど、けど…!


「なにしてるの?」
「振り向いちゃいけない気がして…」

「…意識してくれてるんだ?」


嬉しそうに声を弾ませた林檎は私の頭に服を被せて「私も後ろ向いてるから、着替えたら教えてね」と言われ、シャイニーの机の陰で急いで着替える。わ、ちょっと大きいかも…。


「き、着たよ」
「はいはーい……似合うじゃないっ」
「ほんと?」


すっごく似合ってる、とにっこり笑った林檎に釣られて笑う。ていうか、林檎、ふ、服!


「ごめ…っ」
「麗奈なら、いくらでも見ていいのに」
「そういう問題じゃない!」


林檎は、いつもの長い髪じゃなくて短い髪になっていて、上半身が裸だった。シャツもキャミソールも着ていなくて、また顔に熱が集まる。


「こ、これ、着て!」
「でも麗奈の小さいし…」
「い、いいからぁ!」


ボタンがないからあまり意味ないけれど、今まで着ていたシャツを渡して着てもらった。…うん、これなら、大丈夫。腕のところ小さそうだけど。

ていうか今の林檎の格好もかなり色気が、すごい。…林檎の新曲バカ売れしそうな気がする。


「さて、行きましょ」
「…うん」


服は林檎の匂いがして、さっきみたいに林檎に抱きしめられているみたいな感覚で、なんだか落ち着かなかった。



林檎の黄色い服



(藍達に、ちゃんと説明しなきゃ)



20130426


わぁ、修羅場でもなんでもないよこれ。

今日は夜中にずっとイラスト書いてたのでこの時間になりました…ので、これ更新したら寝ます。