事務所の帰り道。QUARTETの皆はこれから音楽番組の収録があるみたいでそのまま別れた。私も仕事はあるけれど、作曲のこともありシャイニーがセーブしてくれている。…有り難い。QUARTETの曲だけじゃなく自分の新曲も作らなきゃいけなくて、皆がラブソングだから私もラブソングにしようかなぁ、なんて思ってたりして。
今部屋に戻っても特にすることもなく、寮の近くの木が生い茂る少し奥まで散歩がてら歩いている。風が吹く度にカサカサと鳴る葉の音は、まるで歌っているかのようで。
「〜♪」
適当に思いついたメロディーを歌っていると、何処かから、声が聞こえた。…誰?
「(あ、ハモってくれてる…)」
即興で作ったメロディーと綺麗にハモる声。あたたかい、そして歌うことを意識していない、自然に、それが当たり前のように音を紡ぐ。癒される、疲れが飛んでいく。
「…誰?」
ぽつり、呟くように言うと、木たちがガサガサと大きく音を立てる。後ろからどさ、と音が聞こえて振り返ろうとするも、突然後ろから抱きしめられた。
「えっ、え、ちょ、なに?」
「シーッ。
麗奈、少しだけ、我慢してください」
耳元で囁くように言われて背が粟立つ。ぞくり、ぞくり。声そのものに艶があり、色気が物凄い。こくりと頷くと「ありがとう」と声が嬉しそうだった。
「貴方は?」
「ワタシはセシル。逢いたかった、My MUSE」
「ちょ、ん、耳元やめ…っ」
はぁ、と吐息が漏れる。耳元はやめてくれ、本当にやめてほしい。駄目なのだ、耳は嫌いなのだ。
「麗奈、会えて嬉しイ」
「…何処かで会ったこと、ある?」
「いえ、会うのは今日初めて。でも、ずっと見てきた」
片言の日本語で話す彼。会ったことは、多分ないのだろう。記憶がないのだ。
「ワタシ、春歌と麗奈の傍にいるために来ましタ」
「春歌と、私?」
イエス、と答えると、彼は私を離して。私は彼と向き合った。褐色の肌、澄んだ瞳。
「これカラは、ずっと一緒に…」
「ちょちょちょ、セシルくん…?!」
唇にキスされそうになり、思わず口を押さえると、残念そうに眉を下げたセシルくんはダメですか?と聞いてくる。当たり前だ、ダメに決まってる!
「こういうことは、好きな人にするべきなの!駄目だよ、」
「ワタシ、麗奈好きです」
「そういうことじゃなくて…」
はぁ、と溜息をついてから彼をちらりと見ると、にっこりと笑顔をくれた。顔が整ってる。…芸能界にいたら人気でそう…って、もしかして。
「セシルくん、もしかしてシャイニーに呼ばれた?」
シャイニー?と首を傾けて問われたのでシャイニング早乙女だよ、と言うと、そうだと肯定した。これから私が面倒を見ることを伝えると嬉しそうに抱きしめられた。
アグナパレス。
20130424
やっとセシルぅぅううう!
けど難しい…他の人だれも手でないけど。
とりあえず次回からはあに2話です!