理解した先には





昨日蘭丸に抱きしめられていたとき、歌が聞こえたからと嶺二と藍、春歌が練習室に顔を出した。そこでやっと蘭丸は私を離して、藍に小言を言われ、嶺二にからかわれて嶺二をきつく睨みつけていた。


「麗奈さん」
「なーに?」
「先ほどの曲、麗奈さんが歌詞も考えたんですか?」

「そうだよ、QUARTETが次に出すアルバムにいれようと思ってる曲」


言うと、春歌はとても好きですと笑顔で言ってくれた。こんな遅くにどうしたのかと思ったが、夢を見てすっかり目が覚めてしまったのだと言う。


「春歌、明日…じゃなくて今日か。
ドライブにでも行かない?」
「ドライブ…ですか?」

「うん。明日は嶺二達仕事だし…トキヤ達は休みでしょ確か」
「はい、そう聞いてます」

「じゃあ皆でドライブ行こう」


お酒はあと数時間寝れば抜けるだろう。飲酒運転がどうとか言われたら困るから念のため出発はお昼頃にして。
出発前にお握りでも作って、車に乗りながら食べたら楽しそうじゃない?と問えば「楽しそうですっ」と可愛い笑みをくれた。お握り頑張りますとそこら辺のアイドルなんかよりも可愛い春歌の笑顔に癒されて、部屋に入った。


「あの、先ほどは聞けなかったんですけど…」
「ん?」
「麗奈さんは、ST☆RISHの皆さんの何がいけないと思ったんですか?」


怖ず怖ずと尋ねてきた、眠れないと言った春歌にホットミルクを机に置いてくすりと笑った。


「彼らは、もうプロなんだよね?」
「はい、」
「さっきも言ったけど、彼らは先輩である私達と教師であり大先輩の龍也の前で歌ったの。
…普通は、本気を出して実力を見せ付けてやろうって思うものじゃない?」

「…はい」

「けど彼らはそうじゃなかった。
カラオケ大会は口実だよ、彼らの実力を見るために嶺二が言い出しただけ」


まだ、春歌はよくわかっていない様子だった。あぁ、可愛いなこの子。


「本気が見えなかったのよ。まるで友達とカラオケにいった学生みたいだった。新人が尊敬すべき事務所の先輩達に見せるパフォーマンスじゃなかった

歌は確かに聞けるものだったし、トキヤはちゃんと歌ってたけど…他はてんで駄目

デビューして少しずつ仕事が入ってきてることに浮かれすぎてたのね」

「…あ、」


何が弾けたような春歌は、ようやく理解したのか困惑した顔はそのままで、私を見た。ごめんなさい、と頭を下げてきた春歌に「なんで?」と問う。


「私…何もわからないで、麗奈さんのこと、酷い人だって…思ってしまったから、」

「ふふ、いいの。春歌くらい彼らの味方してあげないと」
「でも、」
「今は理解してくれたんでしょ?私がなんで彼らを突き放したか」


こくり、頷いた春歌の頭を撫でる。わかってくれたならいい。きっと春歌は聞いてくると思っていたから、ちゃんと理解してくれたのならこれからの生活も大丈夫だ。


「じゃあいいよ、私は大丈夫だから」


うっすらと瞳に涙を浮かべ、今にもこぼれ落ちそうな春歌を抱きしめてやると、ごめんなさい、ありがとうございますと春歌は私の服の裾を掴んで嗚咽を漏らしながら言った。

この子は素直で、優しい子。
改めて、そう思った。



理解した先には



(絆が生まれる)
(なんて)
(かっこいいこと言ってみたりして)



20130423


春歌のターン!
春歌可愛いよ春歌。乙ゲーのヒロインはあまり好きじゃない子が多いのですが、春歌は本当に可愛い。妹にしたい