宴の始まりは、




時間は19時。そろそろ皆お腹が空いているだろう。嶺二には一旦部屋に戻ってもらって音也くんとトキヤ、そして他の部屋の人達を呼んできて、と頼んだ。了解、と快く返事をくれて、またあとでね!と嶺二は食堂を後にした。
嶺二もお腹すいてるだろうから、きっと10分も経たないで全員が集まるだろう。龍也は先ほど電話したとき30分後に行く、と言ってたからもう着いてもおかしくないし。


「麗奈さん、お料理、運んじゃいましょうっ」
「そうだね、じゃあ皆が来るまでゆっくり運ぼうか」


はいっ、と可愛らしい笑みを浮かべて、一つ一つ注意しながら運ぶ春歌がなんだか抱きしめたいくらい可愛かった。抱きしめたいよ春歌可愛い。


「麗奈」
「あ、龍也。お仕事お疲れ様」


あぁ、と両手にたくさんの飲み物が入った袋をぶら下げていた龍也に、ここに置いて、というと。溜息をひとつ零した龍也はそれらを置いてキッチンにあるまだまだ大量の食材に気付いた。嶺二同様、口許をひくと引き攣らせ「これは?」と問われる。シャイニーからだと伝えると、先ほどよりも深い溜息。…いつもお疲れ様。


「あと準備するものはなんだ?」
「あ、食器ださなきゃ」
「じゃあ俺がやる。お前は俺にツマミでも作れ」

「…はいはい、お肉?」
「肉。黒崎も喜ぶだろ」

「お肉大量に使ってるよ?」


それでもだ、と笑った龍也は頭を撫でてから手を洗い、棚に仕舞われている高そうな皿をガチャ、と音を立てながら取り出し、食堂まで運んでくれた。


「麗奈さん、皆さん来ました!」
「はーい。じゃあ龍也が持ってきてくれた飲み物持って、行こっか」


お酒は私が、ジュースは春歌が持ってくれて。どっちもかなり重かったから手がちぎれそうになっていたところを、真斗くんとトキヤが代わりに運んでくれた。(ジュースよりお酒の方が多い気がするのは、きっと明日龍也がオフだからだと思う)


「わぁ、すごいです!ね、翔ちゃん」
「あぁ。
…この料理、七海が作ったのか?」

「へ?あ、あの私はお手伝いで…麗奈さんと寿先輩が」


控え目に訂正した春歌に、翔くんは「七海はどれ手伝ったんだ?」とキラキラと輝く瞳で問う。うん、青春だなぁ…。春歌はハンバーグです、と照れながら答え、楽しみだといった翔くんと笑いあった。…なにこの可愛い子達。


「さ、皆集まったね
んじゃ、食べよっか!」
「ちょ、待ってよ麗奈ちゃん」

「え、なに?」
「ここはさぁ、責任者の麗奈ちゃんが後輩達に頑張ろうね乾杯!みたいに挨拶するところじゃん!」


あ、そうなの?と龍也を見れば溜息をつかれた。う、だって私初めてだからわからないだけだし。嶺二に言われた通り、皆に向き直ると、しんと場が静かになる。テレビとかとは違う、なんだかちょっとした緊張感。


「これから、皆大変なことがあると思う。まだまだ素人同然の君達は、指導されなくても先輩に学ぶことは多いと思うよ

ここでの生活、世界が辛いことを覚悟しなさい。腹が立つことがあったら、見返すつもりで挑みなさい。

誰からも何も言われないような、強いアイドルになりなさい。弱音を吐く時も大事だけど、ファンを悲しませるようなことはしないで。

周りにいる人を大事にして、叱られているうちが花だと思いなさい。言われなくなったら、終わりよ。

君達が高みを目指すなら私は、私たちは、全力で君達を成長させる。

だから、頑張ってね」


それじゃあ乾杯、と最後に笑ってみせると、皆声をあげてカンパーイ!!とグラスをぶつけ合った。



宴の始まりは、



(麗奈ちゃんかっこよかったよっ)
(まぁ…いいんじゃねぇの)

(上出来だ)
(ありがと龍也)



20130421

ヒロインが言った言葉は、私が昔、バスケをしていたときにコーチに言われた言葉です。もう10年くらいも経ってるけどずっと覚えているであろう大事な言葉です。

どこ世界でも、同じだと思って、この言葉を使いました。

台詞が長くて申し訳ありません。