藍部屋の後輩君




寮に帰ると、那月くんが翔くんを抱きしめていて、苦しそうに声をあげる翔は放せ!と叫んでいた。…あんな大声で叫ばれても幸せそうな笑顔でいられる那月くんはすごいと思う。うん、那月くんはアイドルぴったりすぎる。メンタルが強くないとやっていけないもんね。


「あ、麗奈さん!」
「へ?わわっ」


ふと我に返ると那月くんが私に向かって突進してきていて、すぐそばに迫る那月くんを避けるなんて高等技術をもっているはずもなく。ぎゅうぎゅうと苦しいくらいに抱き着かれた。


「ちょ、那月くん!?」
「僕、ずっと思ってたんです…麗奈さんも小さくて可愛いって!」


声のトーンが高くてルンルンと鼻歌が聞こえてきそうなくらいテンションが高い那月くんにたじたじな私は、ぽかんと口を開けている翔くんに助けを求めた。
ハッとした翔くんは眉を吊り上げて「那月!放せこら!」と怒鳴って、渋々と那月くんは私を離した。


「麗奈さんは、ハルちゃんとちょっと違って柔らかいですねー」


言うならばほわほわ、ぽわぽわ?周りに花が飛んでいるような錯覚するくらい那月はキラキラと輝いていた。柔らかい、と言われて眉を寄せた私と翔くんに、那月は疑問符を浮かべている様子。


「それって、太ってるって言いたいの?」
「違いますよー、抱きしめたときに柔らかいものがあたっ「なついぃぃいいいい!!」


キーンと響く怒声。顔を真っ赤にした翔くんがワナワナと震えて那月くんを指差す。


「お前!それ、セ、セクハラだぞ!?」


きゃんきゃんと吠える様はまるで犬のようだ。翔くんは最初私の前で大人しかったから、見た目と違うと思っていたけど、やっぱり見た目通りの子だった。可愛らしい、と言ったら男の子だから嫌がるだろうけど。なんだか弟のようだ。可愛い。


「ふは、いいよ翔くん」
「よくねぇよ!…あ、よくない、です」

「ぷ、あはは!
ふ、ふふ…無理しなくていいよ。もう、可愛いなぁ…」


同じ目線の彼の頭を撫でると、翔くんはピシリと固まってしまった。可愛い可愛いと撫でていると、またもキラキラと目を輝かせている那月くんは「麗奈さんも翔ちゃんを可愛いと思いますよね!」と同意を求められて、私は迷うことなく頷いた。


「い、いい加減頭撫でるのやめろぉおおおお!!!」

「あ、ごめんごめん」


ぱ、と話すとゼーハーと肩で息をする顔が真っ赤な翔くんにくすりと笑って、もう一度ごめんね、と謝れば翔くんは目を反らして「別に、謝ってほしいわけじゃない、です」とぽつり呟いた。


「ふふ、それじゃ私はそろそろ部屋行くね、改めてこれからよろしく」


にっこり笑ってひらひらと手を振れば、那月くんも翔くんも手を振り返してくれたので満足して、私は部屋に向かって歩きだした。


藍部屋の後輩君



(あれ、ていうか柔らかいものって)
(も、もしかして胸のこと…?)
(うわぁ、はずかしい)



20130420

翔ちゃんなっちゃん好きです。
敬語使えない可愛い翔ちゃんください。