幼なじみの域。




ふと我に返った嶺二はゴメンゴメンと笑いながら私を離す。そしていつものような笑みで「いこっか」と言うから、私はただ頷いた。


「嶺二、」
「ん?」
「嶺二は、大人だね」

「そりゃ、麗奈より2歳年上だからね」
「ごめんね」


何に対してのゴメンなのか、自分でもわからないけれど。ただ嶺二が、苦しそうに笑うから。嶺二の気持ちはなんなのかを、わかっているから、なのか。


「謝らないでよ、僕は何もされてないよ?」
「…うん、ありがとう」


きっと、そういうことなんだろう。けれど、私はそういった感情がよくわからない気がするんだ。学園にいたときのこともありで、そういったことに臆病になっているのかもしれない。まだ、私には必要のないものだ。


「…麗奈、寿さん?」
「おっ、トッキーじゃーん!どっか行くの?」

「…寮に入るにあたっての書類を提出しに事務所へ」
「そっかそっか!んじゃ麗奈もちょうど事務所行くみたいだし…トッキー、麗奈とゆっくり話でもしながら行ってきたらー?」


間の抜けたような話し方でトキヤに笑顔で話しかける嶺二は、先ほどの真剣な顔を忘れてしまうほどの威力だった。トキヤも頷いて、じゃあねん!と嶺二は鼻歌を歌いながら寮に向かっていった。(事務所に用事あったんじゃ…え、それも嘘だったの?!)


「麗奈」
「あ、え、と…なに?トキヤ」

「先程…寿さんとなにを?」
「っ、見てたの?」


たまたま、見えただけです。と言うトキヤの言葉に、顔が熱くなる。少し眉を寄せたトキヤ。私を見据えると、寿さんとお付き合いしてるんですか、と問われた。


「そんなわけないじゃん
もしそうならとっくにクビよ」
「あぁそうでしたね。けれど良い雰囲気だったのでてっきりそうなのかと」


言葉に、刺がある。久々に会ったのに、今のトキヤはなんだか怖くて。年下なのに、怖くて。


「ほんとに違うわ、だから勘違いしないで」
「……わかりました」


はぁ、とあからさまな溜息をついたトキヤはぼそりと何か言ったけれど私には聞こえなかった。


「トキヤ、いま楽しい?」
「なんですか、急に」
「ん?なんか気になったの」


充実しています、と答えたトキヤは楽しそうで。事務所までの道を昔の話しで盛り上がった。子役から芸能界にいたトキヤは、私よりも芸歴は長い気がする。本当いえばトキヤのほうが先輩のはずなんだけど、彼は敬語を貫く。


「麗奈」
「なに?」
「また、会えて嬉しいです」

「私も、トキヤとこうして話せてすごく嬉しい」


互いに少しだけ笑って、今度私の兄に会いに行こうと話してるうちに事務所につき、書類提出の他に龍也に呼ばれたから、今度部屋に行くと言われて、わかったと返事をしてトキヤと別れ、龍也が待つ部屋に向かった。


幼なじみの域。



(ほんと、大人っぽい)



20130419

あれ、なんだか話しがおかしく…\(^O^)/