扉を開けると、嬉しそうににっこりと笑った嶺二がいた。
「今の曲、ってさ」
「うん、嶺二のだよ
って言っても、即興で作ったから手直しが必要だけどね」
「そっか、また麗奈ちゃんの歌を歌えるの嬉しいなぁ」
鼻歌を歌いながら歩く嶺二に、気に入ってもらえたんだと嬉しくなった。良かった、いい曲になるように、仕上げも頑張らなきゃ、うん。
「で、嶺二。相談って?」
「え?……あ、うん、それなんだけど」
麗奈と会いたかったから、嘘ついちゃった。ぺろ、と舌を出した嶺二に溜息をつく。電話で吃っていたから、そんなことだろうとは思っていたけど、まさか本当に嘘だったとは。
「もう、駄目じゃん馬鹿嶺二」
「あはは、ごめんね
だって、麗奈の顔見たくてさ」
す、と真面目な顔つきに変わった嶺二に、ぴしりと固まる。嶺二は、私をからかうのが好きだ。だから、顔に出しちゃいけない、本気にするなんて以っての外だ。
「や、やだな嶺二ったらまた得意の…」
「違うって、本気だよ」
「…なんで、」
戸惑う。どこを見ればいいかわからない。今、嶺二の顔見れない。なに、なんで、昨日は林檎、今日は嶺二と、二人共おかしい。
「マスターコースに麗奈が来なかったら、こんな風にはならなかったんだけど…後輩ちゃん以外男しかいないからね
麗奈が危ないでしょ?」
トッキーは昔から知り合いみたいだし、とふといつもの笑みを浮かべたと思ったら、また真面目な顔つきに変わって息をのんだ。
「嶺二…?」
「他の男、見ないで」
「え、」
事務所に向かう道は、木で生い茂っている。突然、嶺二に腕を引かれて道からは見えない木の陰に連れてこられる。疑問符を浮かべるしかできない私は、ただ嶺二を見ることしかできない。
「ねぇ麗奈」
「な、に…?」
「今はまだ言えないけど、いつか言うから。だから、」
誰のモノにもならないで。
そう言って、嶺二は私を抱きしめた。
後輩、Rの行動
(ねぇ嶺二、いつかっていつ?)
(誰かって、誰?)
20130418
れいちゃん大暴走の巻。
嶺二くん大好きですはい。