学園の一期生




早乙女学園。倍率200倍でアイドル、作曲家になりたい人間が集う学園である。現在はかなり知名度が高いものの、学園が開設当時は、本当になれるのか、なんて親が不安がり中々首を立てに振ってくれず入学希望する人間は今よりもだいぶ少なかった。200倍なんて倍率、今では受ける前に諦める人間もたくさんだろう。


私が早乙女学園に入学を希望したのは、昔から音楽に触れて、音楽とともに生きてきたからだろう。父は俳優、母はアイドルから女優。姉は子役からアイドルに転向し、兄は若手アイドルグループのリーダー。私も小学生の高学年までは子役として仕事をしていたこともある。所謂芸能一家。皆、歌に関わっていたし、両親は子供に音楽をやらせたいと思っていたらしく兄弟みなピアノを弾ける。
兄がコンサートで作曲することになり、自分で作曲している姿が楽しそうだったのを覚えている。

ピアノで編曲してみたり、自分で色々な音を当て嵌めてメロディを作ったり。私が作曲家になりたいと思ったのは小学生だった。子役をしていたけれど家族のように華やかな容姿だとは思っていなかったし、裏方のほうが合っている、そう思っていた。


「早乙女学園?」

「そう、ママの知り合いが学園長を務めるの。厳しく審査するから、入学試験受けないかって

…って言っても、開校は再来年なんだけどね?」


まだ中学生の時の話である。やっと中学の勉強にも慣れだした時期で義務教育中。本来ならば高校にあがる年齢でしか受けられない学園でありながら、私は試しに受けてみないか、と声をかけられたのである。

この時点で贔屓目で見られていると言われてもおかしくなかったのだが、シャイニング早乙女は、厳しく、本当に厳しく審査してくれた。

受かってから聞いた話なのだが、開校が再来年なのは、私がまだ義務教育中で通えないから、皆に追いつけないだろうということで、開校前から生徒が学ぶことを個別に教えてもらい、通えるようになったら皆と同じところから学べるようにとの配慮らしい。

理事長である早乙女さんは、私をいれる気満々だったんじゃないか、と思ったが有り難かった。

義務教育中だから、普段は中学に通い、放課後や夜、休日に授業を受ける日々。やっと中学を卒業してから残りの早乙女学園に改めて入学した。

試験段階だったから当時は3年制で、私は残りの1年だけ入学していた。課題もちゃんと提出してたし、大きな行事には必ず出ていた。家族のことは隠して通って、クラスにも友達ができて。

パートナーにも恵まれたけれど、そのパートナーは私を好きになって。私は興味なかったからあしらったけれど、逆上して強姦されそうになって、その人は退学。

そのとき、初めて林檎に出会った。

男の子にしておくにはもったいないくらいの可愛さに目を奪われたのを覚えてる。林檎のパートナーは、その時ちょうど恋愛禁止条例を破って退学になり、互いにパートナーがいなかった私と林檎がパートナーになった。


林檎のために作る曲に、毎日徹夜して、わくわくして。楽しい毎日だった。パートナーになってちょっとしてから、林檎に紹介されて龍也と知り合って。

それから3ヶ月くらいして、放課後に林檎とレコーディングルーム借りて課題曲を作ってたとき

足元を見てなかった私が転びそうになったところを林檎が助けてくれて、そのまま床に倒れ込んだ。

私が、林檎に抱き着くような形になり林檎も私を抱きしめていた。それをシャイニング早乙女が見てしまい、恋愛禁止条例を破ったとして退学しろと言われ、でも誤解だから。なんとかわかってもらいたくてシャイニング早乙女に抗議した。

すると、シャイニング早乙女はニヒルな笑みを浮かべてある一つの条件を提示した。

私が、アイドルになること

シャイニング早乙女の条件に戸惑った。

私は退学でいいから、林檎はなんとかしてほしい、そう言ったのに。私がアイドルにならないなら、林檎も退学だと言われて、私がアイドルになって林檎が退学にならないなら、なってやる。

シャイニーは全てわかっていたけど、私をアイドルにしたいがためにあんな条件を提示したんだって今は思う。林檎も退学にならず、一緒に首席で卒業できたから、本当に良かったって。



「…とまぁ、こんな感じかな」
「りんちゃんとそんなことがあったんだ…」

「恋愛感情、本当にないのか?」
「ないよ、林檎は私のお兄ちゃんみたいな、お姉ちゃんみたいな人だし」


手のかかる妹って思われてるんじゃないかな、と笑って言えばST☆RISHの皆も笑った。



学園の一期生。



(この子達、年下なのに)
(なんかみんな大人っぽいよなぁ)




20130418
20130502修正

ざっくり書くとこんな感じの過去。
本当はまだ書きたいこと色々あったけど、文字数が増えすぎて酷いことになりそうだったので断念。またいつか書きたいですね。


修正しました。