私負けない宣言


「シャイニー!」
「麗奈?」
「林檎、シャイニーどこにいるか知ってる?」


言うなら、今。今を逃したら私はきっと、また負けそうになるから。部屋を飛び出して事務所にきた。社長室を覗いたけれどシャイニーはいなくて、事務室に林檎がいたから聞いてみた。


「シャイニーなら、今は学園にいるわよ?でもどうしたのそんなに慌てちゃって」
「私、負けないから。恋愛禁止条令なんてくそくらえよ!」

「、麗奈」
「ありがとね、林檎。
私、まだ好きな人いない。けど、この人とって思える人ができたら、クビとか話せなくなるとか、そんなのに怯えちゃ駄目だって、わかったから、だから」

「…そう、わかったわ
じゃあ私も遠慮しないで麗奈を落としにいくから
覚悟しててよ?」


くすり、笑った林檎に手を振って学園まで走る。少し遠いから辛いけど、そんなことを気にしてちゃ、シャイニーに負けちゃうから。


「あれ、一条麗奈じゃない?」
「わ、綺麗…」

「龍也!」
「、麗奈?どうした学園に来て」
「シャイニー、どこ?」


学園に到着するとSクラスに向かい、龍也を探した。ら、ちょうど教室から龍也が出てきたので叫ぶ。驚いた顔の龍也に、シャイニーの居場所を聞くと、今は校長室で仕事をしているらしい。


「わかった、ありがと」
「何か、あったか?」
「…ん、私負けないことにしたの

恋愛禁止条令、破ってやるって思って」
「お前、」
「クビ?できるならしてみろっての。私は絶対負けないって、ね」

「…言ってこい。
お前が勝ったら教えてくれ」


頭を撫でられる。こんな遅い時間だけど、今は休み時間らしい。SクラスとBクラスが夜間授業らしく、それなりに生徒がたくさんいる中の宣言だった。先輩である私が言っちゃいけない言葉だ。後輩は今は我慢してね、なんて心で言ってみた。

さぁ、校長室に行こう。


こんこん、とノックをして扉を開ける。書類に向かっているシャイニーは私に気付くと入ってこいと立ち上がった。


「そろそろ、来る頃だと思っていた」
「…私、恋愛するから」
「それは、お前が選んだ誰かをクビにするということだぞ」

「私が選んだ人をクビになんてさせない。私が事務所を辞めるわ

この仕事が大好きだから、クビになったら自分で事務所作って仕事する」


私の言葉にシャイニーは何も言わない。サングラスの奥の瞳は見えないから、正直怖い。でも、


「今まで、早乙女さんの言うことは絶対だから守ってきた。アイドルにスキャンダルはご法度なのも理解してる。

でも、好きになったらとめられない。早乙女さんだって、恋をしたことあるでしょう?

私を思ってくれる人と、ちゃんと向き合いたいの。早乙女さんに言われたことにビクビクして、彼らの気持ちを無下にするのはもう、嫌だから」


ついさっきまで、彼らの気持ちを無下にしていた私が言うのはおかしいと思うけど。ちゃんと正面から、後輩とか同期としてじゃなく、私を好いてくれる男性として向き合いたい。

そして、誰かを好きになったら…もう一人の父親みたいな存在のシャイニーに、仕事を疎かにするなよって頭を撫でてもらいたい。認めて、もらいたいんだ。


「そうか」
「だから私、事務所の掟破ります」

「…好きにしろ。
ただし、好きな男が出来たら報告してこい。それが条件だ」


シャイニーの言葉に、ぽかんと口を開ける。どういう、ことなの。なんでシャイニーは笑ってるの。なんでそんな、嬉しそうに。


「シャイニー…?」
「やっと反抗期を向かえたようだな」
「え?」

「…お前は、娘のような存在だ。あいつの娘は、自分の娘同然。ずっと従順だったお前がいつ反抗してくるか楽しみにしていた」
「どういう、こと…?」

「お前の恋人は、俺が認めた男以外は許さん。お前の父親と、約束したからな」


負けない宣言。


(パパとの約束、?)


20131022
設定ノート見てたら、早乙女さん悪い人すぎてどうしたら元に戻せるかと悩んでできたもの。

ヒロインの父親は、学園入学した年に病気で他界した設定です。
なので今までのもちょこっとだけ変更してます