「では一条さん、黒崎さん。撮影のときは宜しくお願いします」
打ち合わせが終わって、撮影日時を知らされた。スケジュール帳に書き込むと、私を待っていた蘭丸がどか、と前の椅子に座る。
「ことごとくフってるんだってな」
「…聞いたんだ?」
「俺もフるんだろ?」
「うん、ごめんね」
苦笑して言うと、眉を寄せて睨みつけてくる蘭丸に、怒らないでよと言えば理由はなんだ、と問われた。
「ただフられるだけじゃ納得できねぇ。理由を言えよ」
「…一度も、恋愛対象として見てないし、これからも見るつもりがないから。
今まで待たせて、ごめんね」
納得できねぇ、と蘭丸はさらに眉間の皺を深くした。これ以外に理由が思いつかない。シャイニーに言われたことは、絶対に話すつもりはないし、言ったところでどうにもならないから。
「蘭丸のことは、うぅん皆のこと好きだけど、それは同じ事務所の人間として。それ以上でも以下でもない」
「クソ…、」
蘭丸は立ち上がり、先に帰ると声を荒げた。わかった、と返せば、蘭丸は私の腕を引いて、きつくきつく、抱きしめられた。
「蘭丸、やだ、離して」
「離さねぇ」
「駄目だってば
誰に見られたらどうするの」
気にしねぇよ、と蘭丸は抱きしめる力をさらに強くした。苦しい、苦しいよ。ごめんね、ありがとう。麗奈、と掠れ気味の声で呼ばれて上を向くと、私の唇と蘭丸の唇が重なり合う。
「ん、らん…っ」
「好きだ、」
「駄目…!」
「好きだ…!」
どくん。
言わないで、言わないで。君達を守りたいのに、動かないで。このことも、早乙女さんにバレてしまうんだろう、蘭丸が仕事できなくなるのは嫌だ。蘭丸だけじゃない、皆。
「っ、離して!
私は蘭丸のこと後輩としか思ってないの、こんなことされても困る…!」
スケジュール帳を鞄に仕舞い、鞄を引っつかんでその場を駆け出した。
どうして、守らせてくれないの。私は、皆と笑っていたいのに。
なんて、悲劇のヒロインぶる私は、酷く滑稽だろう。
守らせてよ君を
(強くありたいのに)
20130927
あばばばば、ランラン勝手に動かないでください先がこんがらがる