久々に会う家族にホッとして、なぜだか涙が出た。
「麗奈、一緒にお茶飲みましょ」
「お母さん」
「お兄ちゃんから聞いてるわよ。
貴女、告白されてるんですって?」
苦笑すると、母は眉を下げて笑った。早乙女さんは厳しい方、でもねと言う母にわかってると伝えると、ごめんねと返された。なんで、お母さんが謝るの、なんて聞けなかったけれど。
告白されていることは家族皆知っていた。姉はからかってきたし、兄はそいつらをシメるなんて笑顔で言い出すし。
「久々に麗奈が帰ってきてくれて、皆嬉しいのよ」
「お姉ちゃん達に、仕事でもあまり会えないからね」
「いつまでいれるの?」
「三日くらいかな、納期はあるけど早めに終わらせなきゃいけない仕事あるし…後輩のファッションショー見に行きたいから」
後輩のファッションショー、とはレン君のだ。確か兄も出るはず。そこで、レン君と兄はなかなか気が合うらしい。不思議だ。
「あ、そうそう今からね」
母が思い出したように声をあげたと同時にチャイムが鳴り、母は玄関へと向かう。宅配かなぁと思っていたら、嬉しそうな母の声が聞こえた。
「麗奈、トキヤ君が来てくれたわよ」
「…ト、キヤ」
「元気そうですね」
「まぁね、わざわざ来てくれたの?」
尋ねると、兄に言われて来てくれたらしい。いつまでも敬語で可愛くないとか以前言っていたけど、やはり兄はトキヤを可愛がっているようだ。
「じゃあ私、これから仕事だから家空けるわね。トキヤ君、ゆっくりしていって?」
「ありがとうございます、」
母に頭を下げたトキヤに座るよう促すと、頷いて母が座っていたソファに腰掛けた。目の前にいるトキヤは、何を考えているのかわからない、けれど思い詰めた顔をしていた。
「トキヤ?」
「貴女は」
「え、」
「本当に、無茶をしますね。貴女が倒れたと聞かされて、何を思ったかわかりますか?」
「…ごめん」
「何故、倒れるまで無理をするんです?体調管理もできないなど…アイドル失格ですよ」
わかってるよ、と苦笑するとトキヤは溜息をついて「すみません」と言った。トキヤの言うことは正論だし、心配かけたことも本当に申し訳ないと思っている。
「ごめんね、色々」
「カミュさんの告白、断ったそうですね」
「、知ってたんだ」
「寿さんが、話していました。…本当に、誰とも付き合うつもりはないんですか?」
ないよ、と告げると何故?と返された。トキヤに隠すこともないし、早乙女さんに言われたことを話すと、トキヤはだんだんと顔色が悪くなっていった気がした。
「貴女を、事務所運営に?」
「断ったけどね」
「社長は、知っていたんですか、全て」
「うん、林檎に龍也、QUARTET★NIGHTにST☆RISH、全部知ってた」
私が寮に入った日、嶺二に抱きしめられたことも、同期三人で飲みにいって林檎に抱きしめられたことも、トキヤとの会話も、真斗とのことも、音也とのことも。プライバシーの侵害だ、けれどそれを言えるほど私は強くないし、それが早乙女さんだからという結論に達してしまうのは、もう脳が侵されているからだろうか。
「…私は、貴女が好きです」
「うん」
「昔から、好きだった。諦めるつもりもありません」
「…うん」
貴女を困らせることもわかっている。そう言ったトキヤは辛そうで、申し訳なくなる。
「っ、好きです」
「、ごめんね」
早乙女さんは言った。
「誰かと付き合ったら、お前ではなくその相手だけをクビにする」と。
もしそれが林檎や龍也だった場合、二人は人気すぎるからクビには出来ないが、今後一切の接触を禁ずると。
大事な後輩達の夢を潰したくない。彼らの笑ってる顔を見ていたい。キラキラと輝く彼らを応援していたい。
これは、私のエゴだ。
事の真相と決意
(弱い私でごめん)
20130927
当初から変わらない設定ですが早乙女さんが悪い人になっておる…。
プロット読み直したらごちゃごちゃしすぎてたので再び再構築していたのですが、これまたよくわからない感じに。
恋愛になるのか、これ…。