実年齢より下に見られて嬉しいのは20代後半になってからだと思うのは私だけだろうか。
神宮寺くんに言われて答えた年齢に、彼らは驚きを隠せない様子だった。言わせてもらうと、年が同じくらいに見えていたからこういう態度なんだなと思い少しイライラしてしまってるかもしれない。先輩失格である。
「敬語を使わないとか、名前で呼ぶとかそういうのは構わないけど、馬鹿にしたように言われるのは嫌いだから
覚えておいてね」
あぁ、アイドルでよかった。きっと今の私はなんだかイライラしててテレビに出れたものじゃない。けれど職業柄笑顔を作るのは得意だった。この笑みで心の内はバレやしないだろう。
「…翔ちゃん?」
「?」
彼らの中でも小柄な、私と同じくらいの背丈の来栖くんに声をかけた四ノ宮くん。ちらり、来栖くんを見ると私をじっと見つめていて。
「来栖くん?」
「………え、あ、」
声をかけると途端に顔を真っ赤にしてくるりと後ろを向いた来栖くんに、疑問符を浮かべた。すると四ノ宮くんは「あ、そういえば」と笑って、来栖くんの肩をポンと叩く。
「翔ちゃんは麗奈さんの大ファンでしたよね」
「な、ななな那月!おまえ!」
噛み付くように四ノ宮くんを睨みつけた来栖くんに、思わず笑ってしまう。こんな純粋な好意を向けられて、嫌な人がいるだろうか?答えは否。先ほどまでのイライラは消え、来栖くんの好意に嬉しくなった。(単純?…じゃないとやっていけない)
「ありがと、来栖くん」
「う、え、いや…!」
「翔くん」
「!?」
「ん、翔くんってこれから呼ぼうかな。…嫌?」
「い、嫌じゃない!…です」
「ふふ、そうだ、これから皆のことは名前で呼ぶね」
いい?と問えば皆頷いてくれて。そしていまさらながら自己紹介してくれた。うん、やっぱいい子だ一十木くん。
「じゃあ私も改めて
一条麗奈、23歳。早乙女学園の一期生で作曲家コース卒業。本当は作曲一本のつもりだったけど、シャイニーに言われて渋々アイドルになったの
今は…楽しんでるけどね」
そう、私は入学したとき作曲家コースのBクラスだった。そこからどうして首席で卒業できたかは、林檎と出会ってから色々あったからなんだけれども。今は割愛しておこう。
「なんで、アイドルになったんですか?」
「んー…シャイニーの勘違いで、かな」
「勘違い?」
「そう勘違い。まぁ、今思えば私をアイドルにするために、勘違いしたフリして条件提示したのかなって思うけど」
はは、と苦笑すると彼らは聞きたいといいたげな顔で私を見ていた。
作曲家アイドル
(ぜひ!)
20130418
彼女の過去は連載を決めてから絶対に使いたかった設定。
というわけで、次回は早いけれど過去のお話です。