久々に、今日は音也に会える日だ。
お互いに仕事が忙しくて、さらに社長には内緒の恋。
バレないように、夜遅くにだったり、二人きりじゃなくて誰かも一緒だったり。
気を使って会っていた。そして今日は、翔君も一緒に会う日。
申し訳ないと思いながらも、お前と話すの楽しいしと笑ってくれる翔君には感謝だ。

「あ、いた
音也くん、翔くん!」

青信号がチカチカと点灯する。大丈夫、渡れる。
そう思って駆け出したら、目の前が暗くなる。

危ないって声が聞こえて、反射的に目を閉じた。
腕を引かれて、次には温かい何かに身体がつつまれて。
ゆっくり目を開けると、誰かに抱きしめられていて。

「え、あ…」
「大丈夫?」
「うん、ありがと」

見上げるとそこには、大好きな赤。
眉を寄せて苦しそうに顔を歪めている彼に、申し訳なくなった。
よかった、と後頭部に回った彼の手が、ぐっと私と彼を近づけて苦しくなる。

「ダメだよ、なんで飛び出したの」
「ごめん、嬉しくて」

心臓、止まるかと思った。
震える彼の声に、なんだか泣きたくなって。
ごめんね、って言ったら音也くんは泣きそうに笑った。

「無事でよかった」
「音也くんのおかげだよ」

笑顔で、笑顔でと頑張って笑ってみたものの、笑えてるかわからない。
身体が、声が、震える。音也くんが腕を引いてくれなかったら、今頃私は。

「バカだなぁ、もう」

へにゃり、泣きそうな顔のまま笑う音也くん。
ごめんねと、ありがとうを込めて、背伸びをして頬に自分の唇を押し付けた。
みるみる顔は赤くなって、うわあああぁ、と音也くんは声をあげ、私の肩に顔を埋める。

「今、死んじゃうかもしれなかったのに、なんでそういうことするかなぁ…!」
「生きてるもん、だからね
ありがとうと、ごめんねって込めてみたの」

恥ずかしくなって笑ってみせる。あ、今度はちゃんと笑えてるかも。
これからは、気を付けてね、じゃないとオレ、泣くかも。
なんておどける音也くんに、自分からもぎゅっと抱き着いて。
大好きって、伝えてみた。

「オレも、大好きだよ」
「私はもっともっと好きだもん」
「オレだって負けないから!」

どうかなー?って言ってみれば、音也くんはむっとして。
ぐっと近づけられた顔。熱が、集まる。心臓も、うるさい。
さっき轢かれるかもって思ったときよりも、早い心臓に、鳴り止め!と心の中で叫ぶ。

「誰よりも、オレは君のことが好きだよ
君だって、負けないから」

ちゅ、と軽いリップ音と共に離れていった彼の顔。
してやったりと笑う音也くんに、私は一生勝てないだろう。

「音也くん」
「ん?」

怖かったけど、嬉しいよ。
だって、音也くんの気持ち、また聞けたもん。

(あのよ、オレもいるんだけど)
(わ、わあああ翔くん!)
(あはは、ごめん)
(ごめんじゃねーよ!!お前らちょっと周り見ろ!!)

20130821
おとやんてこんな感じでいいですかね。
ダメだ感嘆符つかってないから偽物臭が漂ってる。