シャイニングに言われた仕事をこなしていると、何も言わず突然現れた美月。はい、と渡されたのは1枚の紙。美月はいつも突然で、なにをしてくるか予測ができない。少し大きめの紙は折られていて、何を書いているか確認できずだ。
「なに?」
「いいから、読んでみて」
にっこりと笑うから、仕方なしに4つ折りにされた紙を開いていく。大きな紙なのに、書かれているのはたった1行だ。ナニコレ。
「ねえ、なにコレ?」
「ふふー、これ、私の気持ち」
は?と眉を寄せると、美月は楽しそうにまた笑う。何がしたいのかわからなくて、渡された紙を元に戻す。感想はー?と聞いてきたが、どう答えればいいかわからない。答えようもない内容なのだ。本当、理解できない。
「逆に聞くけど、美月はボクになんて言ってほしいの?」
「え、うーん」
そうだなぁ、と悩み出した美月を放っておいて、仕事を再開する。忙しいから来ても構ったりできないと言ってあるから、美月は文句は言わない。
「藍ちゃんも、同じ気持ちだったらいいなって思うから、私が書いたことと同じこと、言ってほしいな」
美月の言葉に、振り向く。えへへ、と頬を染めた彼女に、ボクの思考は止まる。彼女がボクに伝えたい、彼女の気持ち。
「…わかるはずない、ボクは美月じゃないんだから」
「そりゃ、そうなんだけどね」
「でも、そうだな」
彼女が、ボクに伝えたいのはなんだろう。人の気持ちを考えることは難しい、誰もがそうだろう。でも、彼女だけは。美月の気持ちだけは理解できるようになりたい。
「…ボクは、君が大切だと、思う」
「藍ちゃん」
「まだ、好きとか、完璧に理解したわけじゃないけど美月がボクの隣いるのが、普通になっちゃったしね」
傍にいないのは、嫌かな。そう言うと、美月は顔を真っ赤にして。
「藍ちゃん…っ」
「わ…、ちょっと、苦しいよ」
ぎゅう、と苦しいくらいに抱き着いてきた。今ボクは座っているから、首に巻きつかれた腕が、苦しい。でも、なんだろう。いやじゃないんだ。
むしろ、胸の奥がくすぐったくなるような、そんな感じ。
「藍ちゃん好き。だいすき」
「…ボクも、」
君と同じ気持ち、だと思うよ。
手紙に書かれていたのは「あいしてる」。
きっとそれは、彼女がくれた幸せな言葉。
「ボクも、あい、してるよ」
(何泣いてるのさ)
(だ、だって藍ちゃん…!)
20130820
大好きなようちゃんに捧げます。