世話がやける。
でも、放っておけない。



「らーんまーるー!起きなさい!」



シャイニング事務所の同期であるこの男、ベッドに身体を投げている黒崎蘭丸は人気アイドルの中に分類される。嶺ちゃんもかっこいいけど違う部類のかっこよさがある蘭丸にいつからか好意を抱いていた私は、同期として彼を起こしに来ている。

会えばいつも喧嘩喧嘩喧嘩。だから私が蘭丸を好きだって誰も気付いてないと思う。(や、林檎ちゃんと藍はわからないけど)


「蘭丸!今日会議あるって言われてるでしょ!」
「うるせぇ…」
「うるせぇじゃなくて!
もうシャイニーに怒られるよ?!」


ベッドから起き上がった蘭丸はゆらゆらと揺れながらこちらに向かって歩き出す。あぁやっと起きた。会議には間に合いそうだ。今日に限ってなんで同じ部屋の後輩達はいないんだろうか。


「とりあえず顔洗ってきなよ蘭ま…」















私を通りすぎて顔を洗いに行くんだろう蘭丸に声を掛けた。違う、掛けようとしたんだ。いま、私は

抱きしめられている、蘭丸に。



「え、らんまる…?」
「…黙ってろ」



え、え、待って。なに、なにが、え?何故、抱きしめられたの?黙ってろと言われたから素直に黙っていたら、蘭丸が私から離れた。心臓が壊れそうなくらいドキドキしてる。振り向いて蘭丸を見上げると、


「なん…顔、赤…」
「…んだよ」
「なんで抱きしめたの」


関係ねぇだろ、と一掃した蘭丸に眉を寄せる。抱きしめられたのは私だ、関係ないはずがない。


「やめてよ、急にそういうことするの」


心臓が五月蝿い。どうしよう、顔、見れないよ。早く、早くここを出よう。先に向かったほうがいい、ここにいたら、言ってしまいそう。


「…急にじゃなきゃいいのかよ」
「え、…?」

「お前を、抱きしめる」
「え、は、きゃあっ」


ぐい、と手を引かれて私は、蘭丸に抱きしめられた。確かに急にはやめてって言ったけど…ていうか私許可してないからこれも急にだよ馬鹿!なんて心の中で叫ぶけど、抱きしめられて頭がくらくらしてきた。駄目、駄目だ恋愛禁止なんだから、馬鹿、やめてよ。


「お前、俺のこと好きだろ」
「は?!…な、なに言ってんの?じ、自意識過剰すぎる、って」

「は、吃ってるぞバァカ」
「うるさいな!」


あぁ可愛くない。好きだよって言えたら楽なのに。けど私は、私たちは、


「…もし好きだったらどうするの?恋愛禁止破ったらクビになるんだよ?」
「別に、んなもんに従う気はねぇ」

「ばっ、かじゃないの?」


なんとでも言え、と笑う蘭丸に、私はもうどうすればいいかわからなくて。ぎゅっときつく抱きしめられたまま目を閉じる。とくとくと規則正しい鼓動が聞こえて、蘭丸は緊張とかしてないんだなぁなんて思う。


「好きじゃない」
「…は?」

「だから、好きじゃないよ」


好きじゃないよ、クビになりたくないもん。

なんて、嘘。
クビになったって構わない、それくらい蘭丸にハマってる。でも、


「そうかよ」


私から離れた蘭丸はもうすぐにでも部屋を出れるように着替え始めた。あぁ大丈夫だ間に合いそう。この気まずい雰囲気のまま二人で向かうのはきつい。先に、行こう


「わ、私先に行っててるから」
「待てよ」
「や、ほんと、ごめん無理、今顔、見れな…」


いつの間にかぽろぽろと涙がこぼれていた。泣きたいわけじゃない、嫌いなわけじゃない、好きじゃないなんて嘘だ。こんなにも好きで、好きで。少しでも一緒にいたくてこうして起こしに来てるんだから、


「なに泣いて…」
「や、違うの、泣いてないの」


バァカ、と蘭丸の声が聞こえて。私はまた蘭丸の腕の中にいた。涙、とまらなくなっちゃうじゃない。


「一度しか言わねぇ」
「らん、?」



用な男



(好きだって言ってくれた)
(蘭丸の顔は見えないけど)
(きっと、顔が赤いんだろうな)



20130415

なんだこれは。
ぐちゃぐちゃすぎて\(^O^)/