※25,6歳設定

「好き!」
「わ!…びっくりしたぁ、どうしたの突然」
「んふふ、なんかね、すっごく言いたくなっちゃって」


いつでも気持ちを伝えたいと思う。だって、いつまでこうして隣にいられるかわからないから。だからね、今日も言うの。好きだよって。突然どうしたのって君はいつも言うけど、わからなくていいよ。私が馬鹿だから、信じてるって言ってるのにどこかで信じ切れてない私がいるから。そんな私を、美月は馬鹿だなぁって笑って抱きしめてくれるんだろうけど、でもね。知られたくないの。


「俺も、大好きだよ?」
「ん、知ってる」
「なんだよもー!」
「だって、音也は全身で私を好きだって言ってくれるでしょ?だからね、わかってるの」


にっこり、私は笑って言ったつもりだった。
なのに音也は困った顔して、眉を下げて笑うんだ。ねえ、なんで?


「ね、俺ちゃんと好きだよ。美月のことが大好き」
「音也?」


どうしたら信じてくれるかなぁ、なんて悲しそうに笑うの、やめてよ。
信じてるよ、信じてる。

…本当に?

自問自答を繰り返す。私は音也を信じてる。待って待って、さっきと矛盾してる。
私、わたしは本当に音也を信じてる?

どこかにいっちゃうんじゃないかって。
遠い人になっちゃうんじゃないかって。
誰かのところにいくんじゃないかって。

信じてない。信じきれてないね。あれ、私ほんとうに音也の彼女でいいのかな。


「わ、あ…どうしたの?なんで泣いて」
「ごめん音也、私彼女失格だ」
「え、?」

「音也のことちゃんと信じてる。信じてるのに、なのに私」


音也がどこかにいっちゃう。誰かのところにいっちゃう。なんで泣いてるの私。泣きたいのは音也だよ。こんなに一生懸命私を好きだって伝えてくれてるのに、私は信じてないんだ。


「大丈夫だよ」
「おとや」
「俺は、これから先もずっと、ずーっと美月と一緒にいるし、離れない」


言葉ではなんとでも言えるから、信じられないのも無理はないよ。だから大丈夫、なんて音也は笑う。あぁだめだ。私本当にだめだ。こんな素敵な人に悲しい顔させた。


「あのさ、俺」
「…別れたくないよ」
「え?ちょ、ちょっと待ってどうしてそうなるの?」
「だって、私、最低…!」
「泣かないで、ね?」


ぎゅっと抱きしめてくれた音也。温かい。落ち着く。ぼろぼろと流れる涙を親指で拭って、今度は優しく笑ってくれる。


「俺ね、ずっと思ってた。
こんな俺を、ずっと傍で支えてくれてる美月に甘えてるって」
「そんな」
「確かにね、綺麗な人はたくさんいるし、素敵な人もたくさんいるよ」
「っ、」
「でも」


さっきよりもきつくきつく私を抱きしめて、音也はちゅ、と音を立てて私の額に唇を落とす。ほらまた、音也が好きだよって言ってくれてるみたいに。


「でも俺が抱きしめたいのは、キスしたいのは、おはようって笑って、おやすみって隣で眠りたいのは美月だけなんだ」


顔をあげると、音也はすごく綺麗に笑う。少し離れてポケットに手を突っ込むと「これ、」と私に何かを差し出した。


「音也…?」
「ずっと一緒にいれるよ」
「え?」
「社長にね、お願いしてたんだ、ずっと。
何度も駄目だって言われた。クビにするぞとも言われた。
でも、諦められなかったんだ。美月とずっと一緒にいたいって思ってるから
先月、やっと社長が認めてくれた、仕事おろそかにしたらすぐ別れさせるって脅されたけど…でも、美月と一緒にいたら俺、今まで以上に頑張れると思うから」


ねえ音也、私なんかでいいんですか?こんなに私を考えてくれてる音也を、信じてなかったんだよ。それなのに私を、私との未来を選んでくれるんだね。


「おとやぁ…っ」
「大好き、本当に大好きで、愛おしくて、離してあげられないんだ」
「すき、だいすき…!」

「俺も大好き…やっと言える。
ねえ、愛してるよ。だから俺と」


結婚してください



(なんて素敵)
(なんて幸せ)
(もう迷わない、もうずっと貴方だけを信じてく)

20131011
音くんでした。なんかこう最近切ないものばかり打ってしまいます。