ゆめ | ナノ


 
『今からそっち行ってももいいですか?』


メールが着いたことを知らせる着信音と、家のインターホンが鳴るのはほぼ同時くらいだっただろう。
(家が近いってこういう時に心の準備ができないからちょっと不便だなんて、俺らしくもねえ)

しーずーおーくーん、なんて子供のように名前を呼ばれて、急いで出ていけばやっぱり予期していた人物。まさにそいつだった。

薄手のカーディガンにこれまた薄いワンピースという、季節の割になんだか妙に寒々しい恰好でにこにこと目の前に立っている彼女に「早く入れよ、」と、外よりも断然温かい自分の部屋に通す。


意外とまだ寒いんですねえ、困ったように笑いながら冷たくなった手のひらをこすり合わせながら彼女がベッドの縁に腰掛ける。


「静雄くん、あっためてくれますか?」


俺の返事も待たずに、ぎゅう、と、手のひらから伝わるひんやりとした感覚。


「わあ、静雄くんの手暖かい!」
「そりゃ今までずっと部屋にいたし」
「あ、寝てたところ起しちゃいました?」
「いや、何もしてねえよ」
「ふふ、ならよかったです」


安心したのか、それとも俺の手の体温が移ったのか。
どちらが理由かは分からなかったが、彼女の手に本来の温かさが戻ってきたみたいだった。

もういいかなあ、と、言いながら彼女が手を離そうとする。
いつまでたってもその手が離れていかないのは俺の所為。
なんとなく名残惜しくて離せないまま手を繋いでいた。

「静雄くん?」顔を覗き込んでくる。


「もう暖まったから離してくれていいですよ?ありがとうございます」
「…もう少し、」
「ん、なんですか?」

「…もう少し繋いでたい、って言ったら、嫌か?」



その言葉に彼女が嬉しそうに首を横に振るのを見て、そのまま抱きしめた。


そのを致死量


いつの間にか絡んだ指は恋人繋ぎになって、彼女の口から紡ぎだされた言葉。


(指先から、わたしの気持ちが全部伝わればいいのに、なんて。)




(by 忘却曲線)

女子高生とお幸せなシズちゃん。
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