ネタ | ナノ




泣く赤司さま
2012/08/31 23:39

「ねえ、さっきの男となんて話してたんだい?」
「ないしょ、楽しいお話かな」
「……いつもそうだね」
「ん?」


軽い調子で進められていた会話にいきなり震えた声が入り、そこでようやく顔を上げる。見上げた赤司くんの赤と金色の瞳は潤んでいて、ゆらゆらとゆれていた。


「僕だけが君のこと、好きなような気がするんだ、いつも、いつも、僕だけが」


苦しそうに、必死に紡ぎだす言葉の羅列に、ついつい笑みが深まる。それを見た赤司くんはぽろりと、その綺麗な赤い瞳から透明な雫が溢れ出させた。


「僕を、愛してよっ…」


ああ、可愛いなあ。私のことで必死になって、いっぱいいっぱいになって、泣いてくれるこの人。とても、愛おしいと思えた。その涙がきれいでもっと見たいと思うけれど、次は笑顔が見たい、なんて矛盾した気持ちを抱える自分自身につい笑ってしまった。


「なに笑ってるんだよ、もう、いやだっ、」


ああ、笑ったら勘違いされちゃったよ。本格的に小さく声を漏らしながら泣き出して、必死に服の袖で涙を拭う赤司くんの腕を掴む。そんなに擦ったら目が腫れちゃうよ。


「ごめん、ごめんね、好きだよ、赤司くん」


しょっぱい涙をわざと音をたてて唇で吸い上げ、好きだと繰り返せば、強張ったままだった赤司くんの体からゆるゆると力が抜けていき、ぎこちない笑顔でだが笑って私を見てくれた。


「ずるいね、きみは」
「なんで?」
「僕は君が触ってくれるだけで結局全部許しちゃうから、」


またぽろりと流れた涙にフッと笑い、キスを落としながら呟いた。


「知ってる、」