「ほらほら、朝ご飯食べて!」
満面の笑顔を浮かべて、カルテを椅子へと誘導する。
彼が座ったのを確認すると、フレンは棚から出した木製の皿にスープを盛り付けた。
出来て間もないそれは湯気がたっていた。
「さっ、召し上がれ!」
無邪気な笑顔を浮かべて言う。
カルテはしばらくスープを見つめたあと、スプーンを取り一口。
「…………」
「………………どう?」
フレンが作った料理は、正直美味しくなかった。
期待と不安の色を瞳に宿して尋ねてくるフレンに、カルテはしばらく黙り込んだあと、正直に「美味しくない」と答えた。
「お、美味しくない……!? そっかぁ……」
「…………」
肩を垂らして落ち込むフレンを見ると、少しだけ、胸が痛い気がした。
カルテはそっと胸元に手をやる。
「胸が、痛い……?」
ぽつりと漏らすと、フレンは硬直したあと慌ててカルテの両肩を掴んだ。
「まっ、まさかこれを食べたせいで……! だ、大丈夫カルテ、気をしっかりーっ!」
「いや、たぶん、違うと、思う」
身体をぶんぶんと前後に揺らされながら、途切れ途切れに言うと、フレンは瞳をぱちくりした。
そしてカルテの肩から手を放し、人差し指を自身の顎にあてて考える動作をする。
やがて答えがでたのか、フレンは表情を明るくすると嬉しそうな声色でカルテに告げた。
「それはたぶん、フレンが落ち込んでいるのを見て、カルテが悲しんだんだよ!」
「悲しむ……?」
悲しむ。悲しい。かなしい。
『それは、ヴァルト様のことで悲しんでいるから?』
さっきフレンが言っていた言葉を思い出す。
博士が亡くなったときは、胸が苦しかった。
フレンが落ち込んでいるときは胸が痛かった。
悲しいとは、胸が苦しくて痛いことなのだろうか。
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