しばらく歩くと、出店が連なる通りに出た。
村唯一の広場に続く道であり、店があるのもここだけだ。
さっきまで静かだったのが一変し、客を呼び込みする声、村人たちの楽しげな話し声、子供のはしゃぐ笑い声、さまざまな声が入り混じって聴こえてくる。
「うわぁぁっ、人がいっぱいだねカルテ!」
フレンが興奮気味に言う。
しかしカルテはいつもと変わらない淡々とした声で「そうだな」というと躊躇うことなく道を進んでいった。
「あっ、あれなんだろう、すっごく綺麗! わぁぁっ、可愛いぬいぐるみ! あ、あのお花小さくて可愛い! あれは――」
止まることのない好奇心に、フレンは忙しなく首をあっちへこっちへと動かす。
「よそ見ばっかしてるとはぐれるよ」
カルテが忠告してもフレンは首を動かすのをやめない。
カルテは溜息を吐くとフレンの小さな手を取って、賑やかな道を進んでいった。
「これとこれ、あと、これも」
フレンが周りに興味を示している間にも、カルテは次々と必要な食材を揃えていく。
「はい、おつり」
出店の主人からおつりを貰い財布に入れると、カルテはフレンの手を取り再び歩き始める。
今日の買い物はこれで終わりだ。
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