「うぅ……、ごめんなさい、カルテ」
おだやかな風景が連なる道を歩いていると、フレンが項垂れながら謝りをいれた。
カルテは無表情で「別に」とだけ返し足を進める。
手には空の籠を持っている。
二人は今、夕食の買い出しへと出ていた。
本来なら三日分ぐらいの食材はあったのだが、フレンの練習により全て消えてしまったのだ。
すっかり落ち込んでいるフレンとは裏腹に、カルテは無言のまま歩く。
やがて、フレンがぽつりと呟いた。
「料理って難しい。フレンじゃできないのかなぁ……」
ちらりとフレンを見る。
眉を下げ、肩を垂らしている姿は、ただでさえ小さい身体をなおさら小さく見せた。
カルテは視線を前に戻すと淡々とした声で言った。
「初めから上手くなんていかない。慣れればそのうち出来るようになる」
「カルテ……」
フレンが顔を上げる。
「もしかして……励ましてくれるの?」
「励ます?」
振り向くとフレンは笑っていた。
大きく頷き、小走りでカルテの隣に並ぶと更に言葉を続ける。
「フレンが元気ないから、カルテはフレンに元気になって欲しいの?」
「……わからない」
ゆっくりと首を左右に振る。
しかし何故かフレンは嬉しそうに口元を綻ばせると、「そっかぁ」と呟いた。
足取りはさっきよりも軽い。
どうしてかわからず、カルテは首を傾げた。
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