フレン | ナノ




10

「うぅ……、ごめんなさい、カルテ」

 おだやかな風景が連なる道を歩いていると、フレンが項垂れながら謝りをいれた。
 カルテは無表情で「別に」とだけ返し足を進める。
 手には空の籠を持っている。
 二人は今、夕食の買い出しへと出ていた。
 本来なら三日分ぐらいの食材はあったのだが、フレンの練習により全て消えてしまったのだ。
 すっかり落ち込んでいるフレンとは裏腹に、カルテは無言のまま歩く。
 やがて、フレンがぽつりと呟いた。
 
「料理って難しい。フレンじゃできないのかなぁ……」

 ちらりとフレンを見る。
 眉を下げ、肩を垂らしている姿は、ただでさえ小さい身体をなおさら小さく見せた。
 カルテは視線を前に戻すと淡々とした声で言った。

「初めから上手くなんていかない。慣れればそのうち出来るようになる」
「カルテ……」

 フレンが顔を上げる。

「もしかして……励ましてくれるの?」
「励ます?」

 振り向くとフレンは笑っていた。
 大きく頷き、小走りでカルテの隣に並ぶと更に言葉を続ける。

「フレンが元気ないから、カルテはフレンに元気になって欲しいの?」
「……わからない」

 ゆっくりと首を左右に振る。
 しかし何故かフレンは嬉しそうに口元を綻ばせると、「そっかぁ」と呟いた。
 足取りはさっきよりも軽い。
 どうしてかわからず、カルテは首を傾げた。

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