フレン | ナノ






「なに」
「……えへへ、カルテ大好きっ」
「……そう」
「うんっ」

 すりすりと顔を胸にこすり付ける。
 まるで猫のようだ。
 カルテは表情を崩さないままフレンを見下ろしている。
 しばらくしてフレンがカルテから離れると、拳を作り気合十分といった感じで彼に告げた。

「フレン、いっぱいいっぱいお料理の勉強して、カルテに美味しいもの沢山食べさせてあげるね!」

 最後に「フレン頑張る!」と付け加えた。
 笑顔を浮かべているフレンを見つめていたら、カルテは無意識に口を開いていた。

「……教えてあげようか」
「え?」
「料理」

 フレンが拳を作ったまま硬直する。
 しかしすぐに瞳を輝かせると、勢いよくカルテに詰め寄った。

「い、いいのっ? 本当の本当にっ?」
「別にいい」

 平然と言い放つと、フレンは表情を更に明るめ、そして満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。


****


 フレンは思っていたよりも不器用だった。
 包丁を使えはまな板まで切ってしまい、調味料を間違えたり、踏み台から足を滑らし転倒したり。
 まるで絵に描いたようなドジっぷりである。


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