花葬金魚 | ナノ


朝ー、伝書鳩により届けられた一通の手紙。


「こ・・これは、まことか」



ここ、ミカゲの神社の神使である巴衛は文を読み終え、顔色を変えた。すぐさま社に仕える鬼火童子である鬼切と虎鉄徹を呼び寄せる。


「「なんでございますか巴衛どの!」」
「すぐ準備をしろ」
「「・・は?」」
「神子がくる」


鬼切と虎徹は巴衛の言葉に一瞬止まり、お互いの顔を見る。だがすぐ声を荒げて叫んだ。


「な、ななな、なんと!?」
「それは一大事ですぞ!」
「鬼切!すぐに神子様を迎える為の準備を!」


慌て叫び、鬼切と虎徹はその場を後にする。巴衛は小さくため息を吐いた。


(まさか神子が来るとは・・奈々生のことか・・?)


「面倒なことにならなければよいが・・」



「きゃー!遅刻!」


その頃、社の土地神である桃園奈々生は遅刻ギリギリのところで学校へ行く準備を進めていた。制服に着替え、髪をとかす。襖が開き、巴衛の姿が見えると奈々生は睨みつけながら叫んだ。


「ちょっと巴衛!どうしてもっと早く起こしてくれなかったのよ!おかげで遅刻じゃない!」
「ぎゃんぎゃん騒ぐな。それどころではなかったのだ」
「はあ?・・なによそれどころじゃなかったって」


奈々生の言葉に巴衛は喋るのを止め、奈々生を見つめた。それに不覚にもどきっとする。


「奈々生」
「・・な。なによ?」
「今日は学校へ行くな」
「はあ!?なんでよ!」


あまりの言い方に奈々生は激怒する。巴衛はゆっくりと口を開いた。


「・・あの方がお越しになられる」
「あの方?」


そう、なにやら片手に紙を握りしめる巴衛の顔色は真っ青で。奈々生は首を傾げたのだった。