最近のアイツは口を開けばれんちゃんれんちゃん。うるせーんだよ。
「ばーんちゃん!」
「うわああっ!?」
考え事をしていたみたいで、名前を呼ばれ振り向けば名前の顔が間近にあり驚いた。思わず大きな声をだしてしまう。
「・・どうしたの?」
「いや、考え事」
「ふーん?めずらしいねえ。ばんちゃんが考え事なんて。」
「あのなあ俺だって・・!」
「知ってるよ。だからそんな怒んなさるなって!」
笑顔をみればなにも言えなくなる。・・ほんとコイツはずるいと思う。
「怒ってねーよ!ほらさっさっと帰るぞ!」
「あ、ばんちゃん待って・・!」
妖館へ帰ればまたれんちゃんの彼女だという人がいた。
わたしたちに気がついたれんちゃんはこっちに手をふってくるが、逸らしてしまう。
(・・こんなのいつもなのに・・)
「よお。学生ズ。今帰りか?」
「アンタも学生だろ」
「やー俺あんま実感なくて」
俺が言った言葉にへらへらと笑い、コイツはそう言った。イライラする。名前が泣きそうなのもこんな公衆の面前で女といちゃいちゃしてるコイツも。
「連勝くん。この子たちだーれ?」
腕にぎゅっと身体に密着させてる。胸がでかいからやけにあたってるのが強調されてる。
ああ、確か巨乳好きだったな。呆れてしまう。
「一緒にこのマンションに住んでんだよ。」
「やだー浮気?」
「ばーか、寮みたいなもんだよ」
ちゅ、
軽く額にキスをするれんちゃん。ああ。こんなにも特別なひとには優しいんだ。
「・・ばんちゃん行こう」
「あ、ああ・・」
早足で進む後ろ姿は少し震えていた。
「名前」
「びっくりしたねえ。まさかあんなところで・・」
「名前」
「れんちゃんも部屋でやってくれればいいのに・・」
「名前泣いてんの?」
「・・・、泣いてなんか・・」
次の瞬間、ばんちゃんの腕の中にいた。不器用な抱きしめ方になんでか安心する。
「・・ばんちゃ?・・」
「あんな女ったらし止めろよ。」
ばんちゃんの言うとおり。諦めれたらどんなに楽か。・・でもね
「そんなこと言っちゃダメだよ。れんちゃんだってちゃんと考えてるよ」
「なにを考えてるんだよ!?あんな毎日・・とっかえひっかえで・・!」
「どうして!?どうしてそんなこと言うの!
ばんちゃんにれんちゃんのなにが分かるのっ!?」
「・・・っ」
なんだよ。それ。確かにアイツのことなんかわかんねえよ。
「お前こそなんも知らないクセに知ったかぶってんじゃねーよ!」
「な・・!?なにそれ・・酷・・っ!」
走り去って行くばんちゃんの後ろ姿を見つめて心がぐちゃぐちゃと、黒に染まる。
ばんちゃんなりの優しさだと。気づいてしまえばどうってことなかったのに。
わたしは一度に二つも大事なものを無くしてしまったのだった。