100000 | ナノ



※DCからDBの世界へ来た子。



気づいたら知らない世界に来ていました。


ここはどこだろう・・確かわたし新一と事件現場にいた筈・・はて?いいところまで犯人追い詰めたのはよかったんだけどそれから後の記憶が曖昧・・・ってかほとんどない。あの後どうなったんだろう。まさか新一の独り占め?そんなの許さない。今回はわたしのほうが有利で称えられるのもわたし。明日の新聞には新一じゃなくてわたしの記事がでかでかと載っているはずなのに。このままじゃそれすらもかなわない。

「早く帰してー!」

叫んだ瞬間後ろでパアーンと鈍い発砲音が響き渡った。静かにしろってマスク姿の男たちが叫んでる。あれはライフル?物騒なもの振り回して好き勝手やってるわね。人数多いし、なにかの撮影かしら。そしたらテレビに映ったら誰かが気がついて助けに来てくれるんじゃない?これだわ!

「ちょっとあなたたち」
「なんだテメエは!」

銃口を向けられてふう、と息を吐く。

「どっかで収録でもしてるの?偽物にしてはずいぶんと作りが凝ってるじゃな、」

自分の横を擦れ擦れで通り過ぎた。そのまま銃弾はガシャンと窓ガラスを突き抜ける。

「・・・え?」

なにごとかと割れた窓ガラスと相手を交互に見やる。もしかして、いいや、もしかしなくてもあれは、・・・本物。

「え・・・ちょっと待って・・・それ、偽物じゃないの!?」
「なにをごちゃごちゃと!」
「ぎゃあああああっ!」

男がもう一度構えたことにより死ぬ、と危険信号がおくられた。そんな、まさか。こんな訳が分からないまま、ましてや見知らぬ土地でぼっちで生涯終えるなんて、そんなの。

「絶対、嫌ー!」

確かにわたしに向かって撃たれたはずの弾はいつまでたっても当たることはなかった。これでも歯を食いしばって痛みに耐える覚悟とか、万が一の死ぬ覚悟とかこの一瞬の間でしたはずなのに身体は正直でがちがちと震えていた。目の前にはマントをなびかせて変なヘルメットをかぶって、顔は分からないけど体格からいって男のひとだということは分かった。

「隠れていてください!」
「え、あのっ」
「なんだコイツ!?弾、素手ではじきやがった!」
「グレートサイヤマン!登・場!」

決めポーズがなんとも間抜けで、はっきり言ってダサい。かっこ悪い。仮面ヤイバ―はもっとかっこよかった。

「悪は見過ごさない!僕がまとめてやっつけてやる!こい!」

男たちはあっという間にこてんぱんにされた。強い。見かけは超ダサいのに強いなんて反則じゃない。歩美ちゃん元太くん光彦くんに教えてあげたい。なんて言っている場合じゃない。

「あ、アンタ何者!?」
「ただの通りすがりのヒーロー、グレートサイヤマンです」

あっさりそう言ったグレートサイヤマンの声色は優しくて、なぜかきゅんとわたしの鼓膜を震わせた。だが、それは束の間。すぐ声色が変わる。

「あなたわざわざ自分から敵に向かっていくなんて・・・!普通の人間じゃまずしませんよ!?」
「(え〜!?なに、私が怒られるの!?)・・・なにかの撮影かと思ったのよ、それに、元の世界に帰れるかな、って思って」
「え?元の世界?」
うぐ、と言葉を詰まらせた。異世界から来ました。なんて言っても信じてもらえるはずがない。

「なによ!わたしだって死にかけて怖かったのよ!怒鳴らないでよ!」

わたしの怒鳴り声に今度は男の子がぽかんとしている。そうだわ。この人の力を利用させてもらおう。帰る方法を探しながらこの人の力を味方につけて護衛にまわせばわたしも安全。すぐに帰る方法が見つかるかもしれない。

「あなたわたしの下僕になりなさい」
「え?」

素っ頓狂な声だがおかまいなしに続けた。

「あなたのその変な力、わたしが上手く使ってあげようって言ってるの!あなたのその力とわたしの推理力があれば悪は皆逮捕されて世の中平和になるに違いないわ!そう思わない?」
「はあ・・」
(なんか変わった子だな〜・・)

「あなた今殺されかけてましたけど、」
「だからあんたが必要(いる)んじゃない!」

もう自分がどんな目にあったのかを忘れているらしい。なんか変な子助けちゃったな、と今更後悔するがもう遅い。だけど見過ごすことができたのかと言われればできなかっただろう。それが自分の性分で困っている人を見捨てられない。全く困ったものだ。そういえばこの人元の世界がって言ってたからなにか訳ありなのだろうか。もう慣れっこだがこう変な事件が続くと静かに暮らしたいってのが正直な本音だが。

「心配してるの?大丈夫よ!」

(心配してますよ。あなたのその無鉄砲なところにね)

「わたしに任せなさい。この工藤なまえ様にね!」

どこからその自信がでてくるのだろう。悟飯は頭を抱えた。

「立ち話もなんだから・・・」

その言葉に嫌な予感がした。ちらりとヘルメット越しに彼女の顔を盗み見る。それはぞっとなにかが背中を駆け巡るほどの凍り付く笑顔で。

「そうね、まずは・・・あなたの家に連れていきなさい」

詳しい話はそれからだわ。

ああ、ツイてない。お人好しな自身のことを恨みながらなぜか彼女の意見には逆らえず家まで連れて行ってしまうのだった。