きらきらと輝く星たちがとても素敵で。少しだけ、と思って部屋からぬけだした。だけど思いのほか長居してしまって。こっそりと、部屋までの道を歩いていく。だが自室の扉の前にはジャーファルが待ちうけていた。
「ジャーファル、」
「今までどこへ行っていたのですか」
「ちょっとそこまで」
「嘘をついたらそのぶんかえってきます、と教えたでしょう?」
「・・・空が、綺麗だったの・・だから、その、」
頭上から小さなため息。
「一人で森へ行くのは危険です。あなたは身体が丈夫ではないのですから」
「あら!聞き捨てならないわね!私だって・・ごほ、うっ、」
「なまえ!?ほら、言ってるそばから」
「大丈夫よ」
「あまり無茶はしないでくださいね」
「はあーい」
「分かっていますか。ほんとに」
これは分かっていないだろう、と思わせるなまえの笑顔にジャーファルはため息を零した。それでも。なまえには甘い自分がいる。甘やかすのはよくないがついつい。我ながら馬鹿らしい。
おやすみ、となまえに声をかけてゆっくりと歩き出した。
「確かに、綺麗ですね」
「暇だなあ、」
今日は皆忙しくて構ってもらえない。#名前は#口を尖らせ独り言を言い、不満をぶちまけていた。前方から見知った影。
「ああなまえ!丁度よかった!」
「ジャーファル」
目の前から走り寄ってくるジャーファル。この慌てよう。いったいどうしたのだろう。
「どうしたの?」
「シンを見ませんでしたか?」
「お兄様?見なかったけど…」
「そうですか…」
あまりの落ち込み方にぱちり、と数回瞬き。そしてどうしたのかと聞いてみた。
「なにかあったの?」
「いえたいしたことでは」
「またお兄様がなにかしたの?」
「…したといいますか、」
嫌な予感。そんな予感を胸に抱きながらジャーファルの次の言葉をまった。
「昨日隣の国へ行ってきたのですが、そこでシンが女中に手をだし、大騒ぎに…」
「うわ…」
「それだけならまだしも、さらにその国の姫君にまで手をだしそうに」
ジャーファルの言葉に頭を抱えた。なんて酷い。頭痛がするジャーファルの気持ちが痛いほどよく分かる。
「ジャーファルあれほど宴の席では飲ませないでと、」
「すみませんなまえ」
ん?あれれ?なんでジャーファルが謝ってるの?おかしいな。
「ああそれでお兄様を探してるのね」
「はい」
「そういうことでしたら早急にお兄様をとっつかまえて吐かせますね」
「……わたしがいうのもなんですがほどほどにお願いします」
「ジャーファルは甘いわ」
「なまえはシンに厳しいですね。前泣いてましたよ。たまには優しくしてあげたらどうですか」
柔らかい笑みを浮かべ、そう言うジャーファル。少し眉間に皺が寄ったのは気づかないフリをしよう。
「確かに民のことを一番に考え必死に尽くしてるお兄様のことは尊敬はするけど…この酒グセの悪さだけは…」
優しくする気にもなれないわ、と付け加えればジャーファルは苦笑した。ぽんぽんと頭を撫でられればなんだかくすぐったいように感じた。
「ジャーファルお兄様をいつも気にかけてくれてありがとう」
「なまえには負けますよ」
顔を見合わせて微笑めば遠くからピスティとヤムライハとシャルルカンが探していたシンの名前を呼ぶ声が聞こえた。