「じゃあ、悪いが話の通りに・・この子のこと、よろしく頼むよ。」
「住職様・・?」
「なまえ。今日から君の家はここだよ。」
頭をくしゃくしゃと撫でられ、少し恥ずかしそうに目の前にいる人物に目をやった。すごく優しそう。そのひとの隣には年が近そうな男の子がいた。なまえはゆっくりと歩み寄り、その男の子の前に立つ。
「なまえです・・えと、仲良くしてくださいね・・?」
天使かと思った。なにも反応しない俺に不安の表情をいたかべてる。
「トランクス!挨拶くらいせんか!」
そんな言葉も聞こえないぐらい彼女の笑顔に見惚れてしまったらしい。ふわりと可愛らしい彼女に自分でも分かるくらい顔が熱くなって。胸が苦しくて息がしづらくて、彼女が見れない。・・ああ。もしかしてこれが。
一目惚れ、というやつだろうか。
「なまえ。なにしてんの?」
「え?だって今日はお客様がくるんでしょ?」
そわそわと、落ち着きがないなまえに問いかけてみればそんな返事がかえってきた。
「なまえは別に気をつかわなくていいよ。悟天は客ってより友達だし。」
「そんなこと!友達だって立派なお客様よ!?きちんとおもてなししないと!」
なまえは悟天にだそうとしているケーキかなにかを作るためはりきって腕まくりをしていた。そんな姿にトランクスはしかめっ面。しまった。なまえに話すんじゃなかった。どうしてこうついつい、口からでちゃうんだろうな。悟天に会わせたら絶対やつはなまえに惚れてしまうだろう。断言できる。それは絶対嫌だ。阻止しないと。
「なまえは自室にいろよ。」
「えー!私も会いたい!」
「とにかく!なまえは自室で待機な!」
「・・はあーい・・」
なまえは納得いかない表情だったが渋々おれた。なまえの性格は大体分かる。ここに世話になっていることからあまり強くはでれないのだろう。トランクスは心の中でほっとため息をはいた。・・というもののやはりなまえが気になってしかたないトランクス。そわそわと落ち着きがない。悟天はじと、とトランクスを見た。
「トランクスくん・・なんか僕に隠してない?」
「ば、馬鹿だなあ悟天!そんなことあるわけないだろ!?」
悟天の痛い視線がトランクスに突き刺ささる。
「・・・俺、トイレ!すぐ戻るからここにいろよ!」
居たたまれなくなったのと、このままでは危ないと思ったのか一旦悟天から離れることにした。まあなまえのことが気になるので様子を見ようと思ったのが一番の理由だが。
「・・怪しいなあ」
悟天は閉まった扉を見て呟いた。
「あれ。トランクスくん?」
案の定なまえは外へでていてお茶とケーキがのったおぼんを手にしゆっくりと足を歩かせていたところを見つけた。
「なまえ・・」
「ちょうどよかった!いまね、お茶を持っていこうとしたところなの!」
こっちの気も知らないで能天気に笑うなまえにトランクスは頭が痛い。あれほど出歩くなと言ってもなまえには通用しないのだろうか?
「・・鎖にでも繋いでおくか」
「え?なに?」
あまりの小さな声に上手く聞き取れなかったからもう1回言って、と言うなまえにトランクスはなんでもない、とたどたどしそうに笑った。
「トランクスくーん?どこー?」
「げ!悟天!?」
遠くから悟天の声が響く。トランクスは焦った。
「なんでアイツー、部屋にいろって言ったのに!」
「だあれ?」
「!」
声の方へ顔を覗かせようとするが聞こえるのは声だけで姿は見えなかった。
「なまえ、とりあえずここ!ここ、はいって!」
「きゃ、!」
バタン、と扉が閉まる頃に角を曲がってきた悟天が姿を現した。
「あれ!?確かこっちでトランクスくんの気配がした気がしたと思ったんだけどな〜」
「・・・・・」
「ねえ、トランクスくん。なんで隠れるの?」
扉の隙間から様子を見ているトランクスになまえはトランクスに問いかけた。トランクスはその問いかけに慌てて、答えづらそうにしていた。
「あのこ、確か今日遊びにくるって言っていたこでしょ?放っておいたら可哀想じゃない!一緒に遊びにー、」
「わあ!開けたら悟天に気づかれるだろ!?」
「ええー?トランクスくん意味わかんないよ」
目を逸らしたトランクス。なにを見たのか顔色が変わった。
「トランクスく、」
「気づかれた!もっと奥、って部屋だから隠れる場所が・・ここだ!」
「え!?ここ、は、・・!」
またもや手を引っ張られて強引にそこへ連れ込まれた。、と同時に先ほどまで閉められていた扉が開く。
「トランクスくーん」
悟天の声。きっと一瞬でも気を緩めてしまったのだろう。それを悟天が感じとったのだ。
「なまえ!動くなよ!」
「だって・・身体痛いんだもん」
2人が身を隠した場所は、クローゼットの中だった。いくらスペースがあるからといって、なぜこんなところへはいらなければいけないのだろう。なまえは訳が分からず、少し眉をよせた。
「トランクスくん!私外へでていい?」
「ダメ!」
「むう。意味わかんないよ!なんで隠れなきゃいけないの?」
「・・・それ、は、」
あまりにはっきりしないトランクス。悟天になまえを見られたくない、という独占欲強い結果がいまの状況を招いている。かっこ悪くて言えるわけがない。そもそもお互い距離が近いというのにも関わらずなまえはとくに取り乱す様子もなく、こんなにドキドキしているのは自分だけ。そう思うと悲しくて。男として見られてないんだな、と。いつになったらちょっとは意識してくれるのだろう。
「もういいよ!今日のトランクスくん変!」
「なまえ!」
クローゼットの戸を開けようと手を伸ばす、が先に誰かが開けたのかギイ、と音をたてて戸が開いた。無邪気な笑顔でひょっこりと顔を覗かせる男の子。
「あ。トランクスくんみーっけ!」
「悟天・・!」
「なかなか戻ってこないから探しにきちゃったよ!あれ・・?そのこは?」
悟天の視線がなまえへとうつる。なまえはきょとんと目を丸くして、悟天とトランクスを交互に見ていた。
「なんだ!トランクスくんそのことかくれんぼしてたのね!」
「は?」
なにを思ったのか、なまえは掌をあわせて笑顔でそう言った。
「なんだあ。それならそうと言ってくれればよかったのに!トランクスくんのこと誤解しちゃうとこだった!」
「・・ねえトランクスくん。僕たちってかくれんぼしてたっけ?」
「そういうことにしておこうぜ。」
ひっそりと話す悟天に助かったと、そんな表情を浮かべるトランクス。
「それにしてもトランクスくんにこんな可愛いこの知り合いがいたなんて知らなかった!名前は?僕は孫悟天!」
「私はなまえだよ!悟天くんかあ。よろしくね!仲良くしてくれる?」
控えぎみに聞くなまえの手を悟天は勢いよく握るとなまえはきゃ、と小さく驚いた声を発した。
「もちろんだよ!」
悟天の笑顔になまえもふんわりとした柔らかな笑みをうかべる。それを眺めるトランクスは少し面白くなさそうに、いや、かなり面白くなさそうに、そしてその怒りを抑えるように右手に力をいれた。平然を装うと必死だが、顔は引きつっている。悟天に会わせるとこうなるから嫌だったんだ。
まあ、なまえが楽しそうだからいいか。
・・でも、悟天は半殺し決定。
繋がれた手を見ながらトランクスはそう心に決めた。
10万打企画/きりたんぽ様