100000 | ナノ



「なにやってんだよ」

珍しく大人しく座って外を眺めてるおかしな光景に雨でもふるんじゃないかと、寒気がした。たまたま通りかかっただけだけど、声をかけてあげる自分ってなんて優しい。だが、じろりと睨まれた。

「んだよテメエかよ」
「アンタがそんな大人しいなんてなあ、なに、腹でもいたいわけ?」
「才蔵が俺とやりあってくれねえんだよ!、っくそ!」
「誰かほかのやつとやれば?」
「俺は才蔵と殺りてえの!」
「・・・それ、人前では言わない方がいいと思うぜ」

それだけ聞いたらなんて思うか。男同士でやりあう・・・ぞっと身震いした。

「なあ、伊佐那海知んない?」
「ああ!?知るか!っくそイライラする!」
「うっせーな」

さっさとこの場から退散したほうがよさそうだ。下手にとばっちり受けても嫌だし。だいたい普通の時でもめんどくさいのに、今のコイツはその普段の数十倍めんどくさいといえる。本当、困ったものだ。

「じゃあな」
「おい」
「・・・」

引き止められてなんだか嫌な予感がした。いや、したじゃない。するんだ。振りほどきたいが相変わらずの力の強さにどうしようかと考え込む。

「なあ、お前俺と殺し合いしようぜ」
「は?なんで僕がお前なんかと・・・絶対嫌だ!」

嫌な予感はやっぱり当たった。しかも才蔵の代わりなんて腹立つ。誰がやるものか。

「ってわけだからほかあたってよ。忙しいしね。」
「逃がすかよ」
「ぎゃっ」

その場に押し倒されて頭をぶつけた。涙目で鎌之介を睨み付ける。俯いているせいか顔が見えない。かと思えばいきなり発した言葉の内容に驚いた。

「好きだ」
「・・・!」

絶対今日の鎌之介はおかしい。憎まれ口ばっかり叩くのは愛情の裏返しだと。よくいう好きな子ほどいじめたいってやつ。どこかで聞いたことがあるけど、あの鎌之介に限ってそれはないと思っていた。好きかと聞かれればまだはっきりしないけど嫌いではない。

「おい、どうなんだ」
「っ、ど、どう、って」
「テメエは俺のことどう思ってんのかって聞いてんだ」

いつになく真剣の鎌之介の表情がなんだか色っぽい。ドキッとする。ふいに顔を逸らしてしまった。その態度に気分を悪くした鎌之介はがぶっと歯をたてて首を噛んできた。

「いっつ!?な、なんだよ!」
「否定しねえってことは肯定と受け取るぞ」
「え!ちょっ待て、って・・・あっ」

先ほど噛んで少し赤くなった場所を今度はねっとり舐めあげる。その生温かい感触に震えた。

「っ」

吸いつかれた瞬間痛みが奔る。自分からじゃなにされてるのか分からないため、少し怖い。逃げようと体制をとるが鎌之介が覆いかぶさるように抱きしめているせいで身動きがとれずされるがままになっていた。胸の膨らみに手をかけて感触を楽しむように揉みあげれば切なそうな吐息がもれる。衣服を捲り上げて直に触れば一層甘い声をあげた。

「ふあっ・・・あ、んん・・・っ」

きゅっと乳首を摘まんだり、押し込んだり、ピンとはじいたり、だんだんと固くなってきたことに鎌之介は口角を吊り上げる。

「や、鎌之介・・・っ」

下腹部に手を伸ばし下着の紐を解く。顔を真っ赤に、止めてとお願いするが鎌之介は聞いてくれなかった。力では勝てない。あっさりと力負けしてしまい挿入を許してしまった。

「ひっ・・・」

いきなりの異物感に身体を強張らせる。ゆるゆると動く指と胸の愛撫。違和感はまだあるけれど不思議と痛みはない。

「力、ぬいて息吐け」
「んぅ・・・っは、・・・」

言われた通り息を吐く。落ち着いてくると今度はなんだか変な気分になる。ビリビリと電流がはしって自分じゃなくなるような感じがして怖くなった。だんだん水音が聞こえてきてすっかり濡れた膣内は指を三本ものみこむようナカはほぐされていて一番敏感な部分を鎌之介は攻めた。

「ひあっ、っん、あああっ」

音がすごく耳に響く。気持ちいい。

「だ、め・・・だめえ・・・っ」
「一回イけ」
「ひっ!っ、んうぅううう!」

荒い呼吸を整える。だが休ませないといわんばかりに、鎌之介は行為を続けようとした。

「こっからが本番だろ寝てんな」
「も、だめ・・・」

腰を持ち上げる。そのまま腰を突き出すような姿勢で股にペニスを挟んで、ぬるぬると上下いったりきたり。たまにクリトリスにカリがあたって身震いした。硬く反り上がったペニスをあてがう。肩が跳ねた。

「もう少し、開け」
「やっ・・・こわ、い・・・」
「すぐ良くなる」
「・・・あっ」

ゆっくりしてくれると思っていたが、その考えは甘かった。一気に奥まで挿入された。指とは違う圧迫感。お腹が苦しい。そのまますぐに鎌之介は律動を始めた。最初は入口の方で動いていただけでだんだんと奥へ。無我夢中で腰をふる。

「んんんんんーっ!」

二度目の絶頂は一回目の時とは違って、意識が飛びそうだった。
唇に優しいキスを落とし、もう一度気持ちを確かめあった。
その次の日も昨日のような晴天だった。

「どうした。首のとこ赤くなってんぞ」
「え!?」
才蔵のこの言葉に暫し沈黙して意味を理解しようと考え込むも、すぐ我に返り、ばっと手で首を隠す。まさかこんなとこにも痕をつけられていたなんて。鎌之介のやつ後でシメる。大袈裟なリアクションに才蔵も驚いたが、妹のこの慌てよう。そして先ほどの赤い痕。普段は鈍い才蔵だが、このときばかりはすぐに察しがついた。気まずそうに視線を合わせず逸らす妹の姿に、いやでも応でも分かるだろう。

(鎌之介え・・・!)

「お、才蔵!今日こそは逃がさねえぞ!」

運悪くこの場に現れた鎌之介になまえは急いで今は危険だと目で訴えるものの、まるで気がついてないようだ。

(ああ〜・・・僕、知らなーい)

ちゃんと教えたのに、それに気がつかない鎌之介が悪い。鬼のような形相のした才蔵を相手に鎌之介は背筋がひやりと凍り付く感じがした。もう、遅い。逃げられない。

「覚悟は・・・できてんだろうな」
「それはこっちのセリフだ」

太陽が降りそそぐ雲一つないくらい晴れきった日。
激しく交わる金属音が屋敷中に響き渡った。