100000 | ナノ



「僕おっきくなったらにいちゃんみたいになるんだー」

無邪気に笑う悟天からのいきなりの発言。目をまん丸くさせる悟飯となまえ。さらに悟天は言葉を続けた。

「ぐれーとまんになってなまえおねえちゃんをまもるんだ!」
「グレートサイヤマンだね。悟天くんならなれるよ!」
「わーい!」


悟天がどんなふうになりたいのかを理解したなまえが悟天の頭を撫でる。そんな二人に悟飯は眉間に皺を寄せる。悟飯は面白くない、と思った。確か勉強を教えてくれと言われたから家に招いたというのにいまでは本人は悟天と遊んでいる状況だ。


「悟天!なまえさんの邪魔しちゃダメじゃないか!」


膝から退けられた悟天はすごく不機嫌な顔で悟飯を睨んでいた。それに気がついたなまえは大丈夫、と悟飯に告げる。だが悟飯もまた様子が違っていて少し機嫌が悪いように見えた。

「孫、くっ」
「なまえさん今日の目的は?悟天と遊びにきたんじゃないでしょう?」
「・・あ」


悟飯の言葉にやっと本来の目的を思い出す。テストの結果が散々で。次のテストで80点取らなければ補習、と先生に脅されどうしたものかと途方に暮れていれば悟飯が僕でよければ教えますよ。と言ってくれたのだ。つまり、悟飯の時間をむだにしない為にわたしはしっかりと今日一日勉強しなければいけないのである。


「・・勉強、しましょう」
「はい。その通りです」


カリカリ、とお互いペンをはしらせる音だけが響く。・・それにしても始まってから1時間。会話がないってどういうことなの?


「・・あ、の。孫くん。」
「なんですか。」


素っ気無い。


「いい天気だねえ」
「・・そうですね」
「ね、今日はお昼庭で食べ」
「なまえさん。おしゃべりばっかりしてたら終わりませんよ。」
「・・そう、だね・・」


素っ気無さ過ぎる。いつもの悟飯だったら笑ってくれるのに。目もあわせてもらえず冷めた口調。一体自分はなにをしてしまったのだろう。時計のカチカチ、と動く音が妙に耳に響き、もやもやとした気持ちがすごく気分が悪い。なまえはそっとペンを机に置いた。


「・・孫くん」
「口より手を動かしてください」
「・・私なにかしちゃった?」
「え?・・ちょ、なまえ、さん・・!?」
「私っばかだか、ら、・・言ってくれなきゃわかんな、っ・・」


ぼろぼろと。ついにはあふれ出してしまう涙。必死で拭うが手の隙間から雫が零れ落ちる。ひっ、ひっ、と泣きじゃくる自分の口から洩れる声は言葉にならず。ただただ悲しくて。


「・・すみません・・あの、別になまえさんがなにかしたというわけではないんです・・ただ・・」
「・・・?」


まだ目線はあわせてもらえず。だけど。


「ただ、なまえさんがあまりにも悟天と仲良くしているものですから、」


そう、小さく言葉を吐き出した彼は顔を俯かせてしまった。なまえはそんな悟飯の言葉に目を見開かせて。小さな瞳を数回瞬きさせた。


「、もしかして孫くん」


悟飯の頬が赤く染まる。そんな、まさか。だってあの孫くんだよ?孫くんに限ってそんな。


「・・やきも、ち」
「・・・」

なまえがぽつり言葉を洩らす。心臓が早く鳴り、この静けさがどうしたらいいのか分からなくなる。早く確かめたくて。


「見ないで、・・ください」
「あは、ははっ・・」
「・・!?なんでわらっ・・!」
「だって孫くん女の子みたいっ・・」

いまだ笑い続けるなまえこそ「女の子」だ。悟飯は立ち上がり、なまえのもとまでいく。

「ごめん、笑いすぎてお腹痛い・・」
「そうです。じつは僕独占欲強いんですよ。覚えておいてくださいね?」
「へ・・?」


今度はなまえの顔が真っ赤になった。そんななまえを見て語飯はいつもの笑顔をうかべた。


「冗談です。勉強しましょうか。」
「・・う、うん・・」


どこまで?どこまでが、冗談?ああ。もう、無理。
きっと勉強どころではなくて集中なんてできないんだろうな、と思った私は折角教えてもらい、休日なのにつきあってくれた悟飯に悪いな、と思いつつもきっと今度のテストは追試決定だなと、ぼんやりとした頭で必死になって考えていた。


10万打企画/雪柳様