「シンいい加減にしてください」
いつものジャーファルの小言からはじまった。もともとはシンドバッドが仕事をサボるのが原因なのだけれど。なまえはそんな光景を目にしながら苦笑した。
「はあ、頭痛い・・」
「ジャーファル大丈夫?」
「なまえ」
「は、はいっ!」
ジャーファルの目つきが一段と鋭くなる。どうしたのだろう。シンドバッドに向けていた身体をなまえの方に向けるジャーファル。
「ここ、間違ってます」
「あ、ほんとだ・・ごめんなさ、」
返された書類に目を通す。普通なら気がついてもおかしくない箇所なのに。どうして。震える手を抑え込みながらジャーファルを見た。吐かれたため息に肩がビクリと跳ねた。
「頼みますよなまえ。あなたまで私を困らせないでください」
「・・っ、は、はい・・」
疲れてるのかな、ジャーファル。背中越しでも分かる。どうして話してくれないのだろう。一人で全部せ追い込んで。私は、そんなに頼りない?だとしたら悲しいな・・。
「ジャーファル」
「なまえ」
「あの、今いいかな?」
「後にしてくれませんか?」
目のしたが腫れぼったい。いつも酷かったけれど今日はさらに酷い。そして、機嫌も悪いように感じ取れた。
「えっと、すぐに済むんだけど・・」
「それどころではないんですよ。分かるでしょう?」
わかっている。けれど。
「ジャーファルっ」
「なまえ!」
「・・っ」
ジャーファルに駆け寄った。、が手を叩かれてしまう。その勢いでバランスを崩して尻餅をついてしまう。ジャーファルは我にかえると小さくすみません、と謝ってきた。
じんわりと、なまえが目尻に涙をうかべる。
「なまえ・・?」
「ジャーファル・・なにかあったなら話してほしい、って思ったの。でも、迷惑だったならごめんなさい・・」
「・・私の方こそすみません、少々気が立ってしまっていて、なまえがそんなに心配してくれているなんて・・」
「ううん。私がもう少し仕事ができればジャーファルに負担をかけることはなかったと思うの」
「なまえ・・」
ジャーファルに抱きしめられる。
「ジャーファル!?ここ、廊下・・っ」
「少しだけです」
「・・ジャーファル?」
「なんですか?」
「・・すき、」
「っ、!」
ジャーファルは耳まで顔を真っ赤にさせて、「知っています」と呟き、なまえを抱きしめてる手の力を強めた。
「あとで、あなたの部屋にいってもいいですか」
「?・・うん、」
今日はなまえとずっと一緒にいましょう。
ジャーファルはらしくない言葉を発した。けれどなまえはとても嬉しくて。ふわり、と微笑んだ。