いつも通りの練習風景。途中、練習試合をくみにいったカントクがスキップしながら帰ってきた、と耳にした。そしてカントクはこういったのだ。
「キセキといるとこと試合・・くんじゃった」
幸せそうに笑いにやつくカントク、リコの言葉を部員はみな目を見張った。次の瞬間、ぎゃあぎゃあと騒ぎはじめる部員達。なまえと火神と黒子だけが平然とした様子だった。
「‥キセキってりょーちゃんかな?テツヤ」
「さあ‥僕に言われましても‥」
ピーと笛が鳴って”ミニゲームやるよ!”、とリコさんの声。相変わらずテツヤのパスはえげつないな、なんて思いながらも火神くんのプレーに目を奪われる。そしてドリブルしながら抜くか、と思ったけど相手もくらいついてくる。だけど火神くんは上をいくようにそこからフルスピードでの切り返し。速い。
ミニゲームが終わり、集合の合図。
「海常高校と練習試合!?」
「っそ!相手にとって不足なし!一年生もガンガン使ってくよ!」
リコさんの言葉を聞いてなにか思い出そうとしてる。・・海常・・
”純っち。俺海常行くんスわ”
「海常は今年「キセキの世代」のひとり、黄瀬涼太を獲得したとこよ」
「・・・!」
思い出した。・・じゃあやっぱりさっき言ってたようにりょーちゃんと・・。
考えていればなんだか周りが騒がしい。ふと、顔をあげる。人だかりのなかの壇上にいるひとに目をやれば自分の目を疑った。
「りょーちゃ・・?」
「こんなつもりじゃなかったんだけど」
モデルをやってるりょーちゃんは相変わらずの人気っぷりで。ミーハーなこたちのためにサインを書いているりょーちゃん。毎月雑誌をチェックしていたわたしも同じことは言えないのだけれど。色紙にサインを何十枚書いてたりょーちゃんだったけどやっと一段落ついたのか、長蛇の列も残り僅かとなっていた。りょーちゃんの視界はファンの女の子たちしか見えてないと思ってたけど、りょーちゃんはこっちを見た。いきなりすぎて肩が揺れる。久しぶりに見たりょーちゃんは懐かしく、なんだか雰囲気が違って見えたのだった。
「純っち!」
嬉しそうにこっちへ近づいてくる。
「‥りょーちゃん‥」
「つれないっスよ黒子っちと一緒に誠凛に行っちゃうなんて」
拗ねた子供のようにぶーぶー言いながら抱きついてくる。だからついあやすように頭を撫でてやった。
「調子のってんじゃねえぞ変態ヤロー」
「火神くん?」
いきなりりょーちゃんの後ろから現れた火神くん。べりっと離される。りょーちゃんは眉間に皺を寄せて、火神くんを睨んだ。さらに、その隣にいつのまにかテツヤがいる。
「‥いくら黄瀬くんでも許しません」
「黒子っちまで‥」
「火神くん?テツヤ?」
一気に雰囲気が変わる二人に純は焦る。目つきが怖い。なんかりょーちゃんが蛇に睨まれた蛙だ。なんで急に二人の態度変わっちゃったんだろう。
「黒子っちならともかく、なんであんたに言われなきゃなんないっスか。純っちのなに?」
「火神くんは只のおともだちですよ」
「なんで黒子が言うんだよ!」
‥さて、この状況どうしようか。