突然に芽生えた恋



--どいつもこいつも、バレンタイン、バレンタイン
     そんなイベントは、俺にはどうでもいいことだ--


だと、ずっと今までそう思ってきた
ほとんどの隊員たちはバレンタインとは恋人と過ごすなどという理由で
休暇をとっている、休暇をとらない者は俺と恋人のいない隊員たちだけだ

「はぁ・・・チョコなんざ、俺はどうせもらえないしなぁ・・・」

「まぁ、気を落とすな。本来は男が渡す日なんだぜ?」

「だとしてもよぉ・・・渡す相手はいても受け取ってくれないオチさぁ」


任務はなく、ただ待機所に座っているだけの俺と
例のバレンタインの話題だけが響き渡る


「なぁ、ハンクはどうなんだ?」


なぜ俺にその話題をふっかけるのかが疑問だ
バレンタインなんぞ、1日限りのイベントじゃないか・・・まったく


「バレンタインがそんなに大事な日だとは思わないがな」


「大事な日だとかそうでないかは人それぞれだけど、今頃恋人がいる人間らがイチャコラしてるって思うとなぁ・・・」


「クリスマスにも同じようなこと言ってなかったか?」


愛に飢えている・・・こんな汚職じゃ
愛だのどうだのと言ってる余裕があるのか?普通の軍隊じゃあるまいに・・・
こっちは食うか食われるかの瀬戸際だ・・・

「ルナからもらえねぇかなぁ・・・あいつも一応女だったなぁ」


「あいつから貰うってか?冗談よせよ、料理すらできねぇ女だぜ?」


「まじかー・・・お前そういえばルナと同期だったな」


ふいに出たルナの名前。こいつらとの接点は確かにあるが
俺の弟子でもあり想い人でもある、最近は任務にさえ出てないと聞くが

なにより、なぜコイツがルナの手料理の味を知っているのか・・・
俺ですら食べたことがないのに・・・
俺の中で何かむずむずとした変な気持ちが芽生える。

「ルナの料理はくっそまずいぞ、甘いもののはずなのに酸っぱかったりな、食えたもんじゃねぇって」


「料理ができない女かぁ・・・まぁ、可愛いからそういうのでも許されそうだなぁ」


「まぁな、失敗しちゃったーと舌を出しながらこられちゃ俺だって許してしまうぐらいだしなぁ」


「お前がか?ありえねーって」


俺の知らないルナのプライベートに仕草、言動、行動・・・
すべてにおいて俺には一切なく
こいつにある・・・だが、今の現状をみるかぎり付き合っているわけでもないようだ・・・


「ルナとは付き合わねぇの?」


「いや、あいつはあいつで別に好きな人がいるっていうから応援してるだけさ」


「勿体無い話だな」


「同期ってだけで恋人に進展するとは限らないぜ?」


好きな人がいる・・・それは一体誰なんだ?
今日はバレンタイン・・・じゃぁ今頃チョコを渡しに・・・?
いや、まてなぜ俺が気にしなきゃいけないんだ?


「どうした、ハンク・・・」


「なんだ」


「さっきからウロウロしてるが・・・」


まったく気づかなかった・・・
ルナのことを気にするあまり、無意識にウロウロしていたそうだ
どうしたというのだ・・・いや・・・これはもう





恋だ




ありえない・・・ありえない、この俺が?


「ハンクいる?」


「お、ルナーハンクならそこに・・・・ハンク?」


「何してんの、ハンク・・・」


「あ?・・・・あっ、いやこれは・・・・」



まったく俺らしからぬ行動だ!
床に這いつくばって俺は何がしたかったんだ!!


「・・・・疲れてるのね・・・ハンク少し付き合ってくれる?」


「あ、あぁ・・・」


どうかしてる・・・本当にどうにかしてる
ルナについていけば、少し広い通路にでてきた
そこでルナはクルリとこちらを向き立ち止まる


「あのね・・私料理下手なのね・・・だから手作りじゃないけど・・・これ」


小さな両手で渡されたのは
小さな小包に綺麗にラッピングされたものだった


それを受け取ると
ルナはすぐに両手を自分の顔にあてるのがわかった


受け取ったものはなんなのかすべて理解はした
だが、なぜ俺なのだ?


「ずっと、マスターのこと、ハンクのこと好きでした・・・それはその気持ちです」


「・・・・・」


「め、迷惑でしたよね・・・こういうのマスターはいつも嫌ってましたもんね・・・」


「いや、嬉しい」


「本当ですか?」


正直にいってどうすればいいのか
わからない、受け取って想いを告げられた自分は一体どうすればいいのか
まったく情けない話だな・・・


嬉しそうにこちらを見るルナ
それを見つめ返すだけしかできない俺


「なぁ・・・バレンタインはなんで必要だと皆は思う」


「んー・・・好きな人に贈りものをすることによって愛の確認ができるからです」


「確認?」


「はい、恋人同士だとか片思いだとか・・・気持ちを伝えるチャンスといいますか・・・」


なるほど・・・このイベントを借りて自分の気持ちを伝えるというわけだな・・・
生まれてはじめての恋、恋など縁がない話だと
俺はずっと思ってきた

この先もずっと・・・そうだと
だけど、俺はいつしかルナという女に惹かれていたんだな



「なら、ルナ、私もルナが好きだ・・・あいにくチョコはないが」


「気持ちだけで結構です、それだけで私は満足です」


今まで見せなかった行動、仕草も全部俺のものにできるのか
それとも・・・やはり同期のアイツなのか?

そんなことはどうだっていい話だ
だけどやはり先を越された気持ちは複雑だ・・・



然に芽生えた恋


---END---






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